転送された先には、暗殺者がいた。
アダルトな魔女っ子お姉さんですね?わかります。けど、男がする格好じゃないですよねー?といった仮装の暗殺者だった。
片や、俺はというと、コースローした陽気なラテンなお兄ちゃんがピンクのフリフリの魔女っ子。
二人してきつい仮装だった。
『さて!どこの風習だかしりませんが!仮装して悪戯をするものがあるということで、戦闘ビデオ再生率ナンバーワンのお二人にきてもらいましたー!どうも、司会者の協奏です』
『二人とも見事ですね。しょっぱいものです。ゲストの槍走です』
もしかしなくても、先輩方の企画ですか。
いつの間に追求と仲良く…ていうか、寮長引き継ぐんでしたっけね。そりゃあ仲良くなりますよね。ああ、死にたい気分だ。死なないけれど。
「…ご愁傷さまで…」
「そちらこそ、ご愁傷様だな」
それにしても暗殺者のバランス感覚は素晴らしいものがある。
ひどい高さのピンヒールでたっている上に、よろりともしない。
サイハイブーツってやつかなぁ…などと思いながら、俺はライカとフレドのチェックをしようとした。
「……何、このフォルム」
『魔女っ子なので』
「………許さん」
『…………どうやらコレは、反則狙撃の何かに抵触するようです』
『銃マニアだそうなので、当然でしょう』
名前まで付けて愛着持ってる銃器に、幻といえどおもちゃの光線銃みたいなフォルムをかぶせてくることがとても許せなかった。
俺はフレドとライカを腰の白く上品なくせに、大きな宝石のようなものがついているフォルスターに納めると、魔法石も持たず、一織にむかって構える。
『え、それはすぐ負けてしまうのでは?』
一織は足のベルトから短剣を取り出して、しげしげと眺めたあと、諦めたように元のベルトに戻した。
短剣はおどろおどろしい、今にも叫びだしそうな装飾が施されていた。
『スクリームダガーを暗殺者も片付けてしまいました』
『無駄に名前がついていたんですね』
『両者ともに、素手で闘うつもりのようですね』
『これは暗殺者が圧勝でしょうか』
どっちでもいい。
この戦いが終わるのなら、どっちでもいい。
俺がそう思っていると、試合開始のブザーがなる。
俺は動かなかった。
一織が地を蹴ったと思ったら、すぐに俺の傍にいた。
一織の足が頭上から降ってくる。
俺はそれに腕をクロスさせて応対し、下方に身を沈ませ、そのまますとんとしゃがみこむ。
一織が片足地面に落とすと同時に足を引っ掛ける。
ヒールがついているため苦しい姿勢になってしまったが、その企みは成功した。
一織が俺よりも安定にかく靴を履いていたからだ。
学園のシステムがかけてくれる魔法は、魔法である。
変装は人に幻覚をみせるようなものなのだが、脳にも訴えかけてある。
変装前のリーチが違っても同じようになるようにしてあるのだ。
誤差を修正することができるのなら、修正しないことも可能だ。
変装の魔法は、姿形を変えるものと、幻をかけるものがある。
学園が使っているのは、このミックスで、服装なんかは指定のものを履くとだいたい姿形をかえてくる。
つまり、この靴は姿形を変容させた本物なのだ。
一織がバランスを崩すと、体制を直されるまえに、俺はその足首をもち、後方へと投げる。
舌打ちが聞こえた。
あまり後ろへと飛ばされなかった一織をフォルスターに収めていた銃で狙う。
『そこで銃を使うのか!』
『だましうちにも程があります』
「黙れ。どうでもいい」
珍しく怒っている俺に、解説者も黙った。
銃からはやったらこった映像の光線が出ていた。
一織は離脱してくれたが、たいへん腹立たしい光景だった。