「こんに、ちは」
俺をみて、思わず見とれて、隣にいた親衛隊長を見て、また見とれて首を傾げた転校生は、なるほど、癒し系かもしれない。
「どうも」
「こんにちは」
隊長がニコニコと上機嫌な様子で転校生の頭を撫でた。
ミルクティーブラウンというやつだろうか。薄い茶色の髪は猫毛でふわふわとして気持ちよさそうである。
「会長」
「…会長いんのに、紛らわしいだろ」
「いいえ、僕にとっての会長はあなたしかいないので」
「それは大変失礼だろ」
「……とにかく、この小動物を持っていっても構いませんか?」
「潔く無視したな。おまえが癒されたいのはわかったが、その小動物はちょっとしたアイドルだ。もっていくな」
おそらく、転校生という小動物は容易に一匹狼といわれる男の心もキャッチしただろう。あの男は小動物がとても好きだから。
もちろん、冬の縁側だ。最近成果が出なくて思い悩んでいた爽やかスポーツマンにも癒しが等しく与えられたんだろう。
それは、お友達になる。という選択をするのは当然の運びであるのではないだろうか。
そして、毎日なにやらビクビクしていた副会長に癒し系を好きになって春がきたって、仕方ない。
生徒会の連中が面白がって副会長を応援したり、からかったりするためについてくるのは致し方ないだろう。
風紀委員長と副委員長もお疲れなのはわかっている。
それは俺が会長だった頃と代わらない。
俺が会長になって急激に生徒会の仕事が減ったのに対して、風紀のことはこちらが自由にできることが少なかったので、改変も中途半端になってしまっていたなぁと、俺は思い返したわけで。
今の生徒会長は風紀委員長が好きではないのだから、改変という運びにならないかもしれない。
と思って、チラッと見た風紀委員長は、この数ヶ月で気持ちがガラッと変わったらしい。ちょっと会長を気にしている。
もしかすると、いやされに来たのではなく目的は生徒会長なのか。
風紀委員長の信望者である副会長が、二人を見ていやにソワソワしているのもそのせいかもしれない。
何があったか解らないが、委員長が視線をそらして溜息をついたときにチラッと風紀委員長を見た会長を俺は見逃さなかった。
「あっちもこっちも春だな…この俺を差し置いて」
「…会長にはおできになりませんからね」
また釘をさされた。
俺もそういう意味でリア充というやつになってみたいとは、口に出さない。