下界の友人には下僕がいる。
出会った当初からサドッ気を発揮していたやつに、いないわけがない。
それが生徒会役員というご立派な名称があったとしても、奴の下僕なのだ。
今回、奴がつれてきた下僕は書記と補佐。
うちの引きこもり書記よりも引きこもってしまいそうな、無口で繊細そうで犬気質な書記と、へらへらチャラチャラとした、うちの会計に酷似した補佐。
書記は俺を主人の想い人と知って警戒心露にびくびくと近寄ってきた。
あんな野郎に捕まって不憫だなと思える正直さと繊細さが、不憫で可愛いためすぐに手懐けた。
へらへらチャラチャラしていてまさに軟派な男である補佐は、行動、言動がうちの会計とは違い可愛らしかった。うちの会計がヘラチャラでヤンデレというなら、あちらの補佐はヘラチャラでぐにゃぐにゃでふにゃふにゃ。つまるところ少し頼りない。なんだか不憫で可愛く思い、こちらも手懐けた。
そんなわけで、一癖二癖あり扱い辛そうだが、ほうっておいたら生存競争に負けてしまいそうな二人を下僕という形にして従え守っていただろう友人には悪いのだが、犬系と猫系を可愛がっている。
「おまえなぁ…」
今回はどうやら、その二人を少しずつ慣らしていこうという企みで連れてきたらしい友人が、俺の様子に苦い顔をした。
甘やかしては意味がないのだ。
「俺は可愛いと思ったもんはベッタベタに甘やかす主義なんだよ。文句あんのか?」
あるだろうな。
しかし俺はそれを無視する。
俺は常に飴係だと宣言したい。
だから、風紀委員長や会長に懐かれているわけだが。
「あるに決まってんだろうが。わかってて言うな。つか、若狭(わかさ)、駿河(するが)」
「……何?」
「なぁに、かいちょー?」
「ここに来る前に言っておいただろうが」
何を言ったかは知らない。
知らないがヤンキーどもがたむろする教室の一角、菓子とジュースを広げている俺たちの輪から外れ、ワンコ書記が眉を下げた。
「会長…俺、頑張る。会長も頑張る」
同じく輪から外れたニャンコ補佐も、その背をまるめ、全身でしょんぼりとした気持ちを表した。
「そーそ。俺も頑張るしぃ。かいちょーが頑張ってくれたら、斎さん遊びに来てくれるだろーし」
友人はちらりとこちらを見たあと深い深いため息を吐いた。
「俺には御しきれねぇよ」
それじゃあ、まるで俺が性悪のようではないか。
…性悪では、ないはず…。