新会長にいわれたとおり、俺には恋人は疎か、好きな人さえいない。友人はそれなりにいるし、姑のような人間も二人ほどいる。
会長になる前は恋人作ってイチャイチャしてバカップルとか色々考えた。
考えただけ無駄だった。
男子校云々とかいう前に、そんな時間はなかった。
恋愛に現つを抜かしてる場合ではなかったのだ。
「かいちょおー」
生徒会に入った理由が既に恋愛こみだった会計が背後から抱きついてきた。
抱きつく相手を間違っているということも飽き飽きするくらいそれが普通となってしまった俺は首を振る。
「元だ」
「アハ。かいちょーはずうっとかいちょーだよぉー?」
もうあだ名だよ。と笑う会計は上機嫌だ。
「なんだ、ヒキコモリにかまってもらったのか?」
「ざっつらーい!満足するまでイチャイチャしたよー」
左様ですか。独り身には染みるお言葉です。といわんばかりに見つめてやれば、ふふふと会計が笑う。
「あのねーかいちょー紹介してって言われてんだけどぉ」
「誰に?」
「かっこいーよ?髪、銀で」
「それは不良という名の不登校児なんじゃねぇの?」
「何言っちゃってんのー?会長も不良みたいなもんじゃん」
何を失礼な。とはあえていわない。
母方の一族は皆鋭い目付きをしている。俺は母と目付きがよく似ている。
それをいいことにごり押しと無茶ぶりと脅しつけをよくやる。
「女の子がいいんだが」
「此処には野郎しかいないよー」
「此処じゃなけりゃいるだろうが」
「いるけど。紹介したいのも外部生だけど」
この学園の外にいるというのに、何故わざわざ俺なのだ。そして男なのだ。
会計はヘラヘラと笑った。
「幼なじみでねぇー俺の所属してるのの、そーちょーでさぁ」
貴様も不良だったのか。
わざわざ山から大変だな。と思う。山を降りてもクソ田舎のこの辺りは、不良連中がバイクを転がすとワシらもあんな時代があったなぁふぉっふぉと爺さまや婆さまどもが笑う。改造マフラーで走り込むやつらは、村の住宅街では走らない…といっても土地だけなら腐る程あり、住宅街といってもそれほどの住居があるわけでもない。
やつらはそれらに出来るだけ迷惑を掛けないように暴走する実に礼儀正しい連中だ。
ただ、田舎のヤンキーでも不良は不良。喧嘩はもしかしたら都会の連中より酷いという噂さえある。
「とにかくあってー?」
「面倒くせえ」
「はい、けってー」
強制かよ。
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