地元じゃ、敵もいない、札付きで。
素顔をさらして歩いていても、近寄ってくる奴なんていなかった。…逆にいうと、素顔をさらしたら遠巻きにされてしまって、必要なときに必要なことができなかった。
目は母親に似た細いツリ目で、目つきは父親に似て悪い。
ちょっと思うところがあって、遠い、しゃべり口調すらちがう場所に来た。
いかにも悪そうな顔をさらしてコンビニでかけただけなのだ。
そう、出かけただけなのだ。
メンチきられて、喧嘩を売られた。
喧嘩を吹っかけてきた人間を見て、後々のことを考えた。
観察をしたといってもいい。
ああ、この手の連中は、強さを見せ付けて従わせるのがいいかな。
答えが出た瞬間に、俺はそいつらを叩きのめした。
人数にして、たったの二人。
そいつら二人はいかにも、不良になったばっかりです。ワルに憧れました。という雰囲気をかもし出す、新しい制服をきていた。
ああ、可愛いもんだなぁ。なんて、俺はそいつら適度に地面に転がして思った。
俺たちの兄貴になってください!だなんて、冗談じゃない言葉を聞きながら、一言。
「ユウさん…な?」
感無量ってそいつらのそのときの状態だったと思う。
いきなり子分つくってもた。どうしたもんやろね。
と溜息ついて、そいつらの軽そうな頭と身体に叩き込んだ。
俺は、不良とは関わりあいたくない。
普通に普通の高校生になりたい。
おまえらもデビューしたばっかで酷だけど、俺についてくるつもりなら、あからさまな不良ルックはやめろ。
人を欺け。結構やってみると面白いから。
ということで、どうやら同じ学校に通うことになるそいつらを入学式前に強制的に何処にいてもおかしくない男子高校生にした。
俺はそもそもの原因である鋭すぎる目をめがねで和らげて、いざ、普通の生活へと突入した。
地元じゃ、敵もいない、札付きで。
そろそろ飽きてきたということと、真面目に高校通うからということで、不良は半引退したのだ。
デビューしたばかりだったそいつらは、飽きもせず俺に懐き、お行儀よく、授業をうけ、たまにサボり、それなりにそれなり。ちょっと悪いことするけど、いいじゃん。みたいな高校生になって、五月頃にはクラスに馴染んで、奇しくも俺と同じクラスで笑っていた。
「里村(さとむら)、辺(ほとり)、ご飯いこう?」
にこりと笑ってやったら、里村と辺は一瞬、ごめんなさいという顔をした。俺の化けの皮に非常に苦しんでいるらしい。
「今、今いくから!」
そして、二人を伴って、俺は食堂に向かう。
ふと、見た窓の外は曇り空。
「雨…ふるかねぇ」