そんなお名前がついたなんて知った数週間後。
時は六月。梅雨入りしてしばし。
熱いし、蒸れるし。でも、天然キャラを崩せない。なんで、このキャラに設定したんだ。そうだ、河上さんちの息子さんが面白かったから、からかおうと思ったまでだった。
俺に、雄成くん雄成くんと懐いてきたし、大げさなくらいビビリなところが気に入っている。天然なら、悪気なく、恨まれることもすくなく、河上さんちの長男をピンチに落とすことができるだろうとおもっての選択だ。
それほど、河上くんはおもしろかった。
びびっては俺に頼ってくる河上くんは、すでに俺を心の友に格上げしている。
河上くんの信頼は安いなぁ。と思いつつも、頼られたら構ってしまうのは、性分だ。
それが優しいか、優しくないかは相手の普段の行動次第だ。
そんなわけで、天然ぶってる俺は、暑い溶ける、暑いと机と仲良くなりながら、八つ当たりするのも困難なわけだが。
そんな鬱陶しい初夏。
京一のまた今度はまだ果たされていない。
探さなくても、在籍している中学校に行けば済む話だろうが、そこまで行くのは面倒くさいし、会おうともまだ、思わない。
だから、油断していたといえば油断していたし、まぁ、俺が会いに行かない限りあわないだろうとかおもっていたわけだ。
…京一は、意外とアクティブだった。
校門に、明らかにサボりのガクチュー。
ふと、学校を見上げた京一と運命的なまでの偶然で目が合う。
あ、しまった。手を振るべき場面か、天然的に。
開いた窓からぶんぶん手を振って笑う。
まぁ、そういうキャラつらぬかならない俺を、わりと近くで見ていたワンワンな二人は、微妙な顔をした。こけるふりして、あいつら二人の足を踏みつけ、俺は校門に向かう。だりぃから、明るくわらって、何もわかってない振りしてサボってやろう。
と、俺は京一に駆け寄った。
「ええと…名前きいてなかったね!」
駆け寄ったくせに、息も切らしていない俺は、元気よく、京一に話しかけた。
「…あ、ああ…植田京一だ」
会いにきたくせに、覚悟は決まってないみたいな様子の京一が、この暑さと湿気のおかげもあって、鬱陶しい。
「植田くん?オッケー。これからよろしくね」
なんてにこにこする。
まぁ、校舎からすごい量の人間に見られてたわけだが。そして、教師もそろそろ走ってくるわけだが。
まだ、授業には早いんだが、さすがに明らかにサボりな中学生を補導する使命ってもんが教師にはあるだろう。
俺は、京一の腕を掴む。
走り出す。
ワケのわかってない京一は置いておいて、後ろをチラッと見る。
同時に京一もチラッと後ろをみた。
生活指導のゴリマッチョが追いかけてくるのが、目に入っただろう。
俺はそのあと、ちらっと校舎に顔を向けた。
これだけで、うちのワンワンたちは俺の意図を察したことだろう。
荷物もってこいよ、やろうども。…だ。
俺はこのあとの授業は完璧にぶっちだ。