ひとりこと2



退魔の剣と呼ばれる剣の威力はすさまじかった。
体から抜けず、少しずつ、少しずつ自由を奪う力を持っていた。
苦しかった。
痛かった。
あれほどまで嫌われ…憎まれてしまった事が苦しさを増した。
もう、何もないことに絶望を覚えた。
傷の痛みも苦しみも、少しずつ憎しみに変わっていくことにも、恐怖した。
あんなにも好きだった。あんなにも愛していた。抵抗もしないで受け入れたくせに、あとからあとから未練がましく。
どうしてこうも違えてしまったのだろう。
どうして今さら憎しみに駆られているのだろう。
その憎しみは、皮肉にも俺をひとの形にした。
いや、なったのではない。器をのっとっただけだった。
その人間は絶望していた。
己の力のなさを嘆いていた。
そして俺はその人間の身体をかりるかわりに、力を与えた。
そして俺は、彼に会いに行った。
誰にも気付かれず、誰にも知られることなく。
彼は、やつれていた。
彼は、疲れていた。
その姿を見て俺の憎しみは疑問にかわる。
疑問は、彼を見ているうちに姿をかえる。
そうして力だけを人間に残し、ひとに入った分形を覚えていた俺はまるでひとのような姿で、彼に話し掛けた。
会えてよかった?ほんとは、会わなければよかった。けれど出会ってしまったのなら、こうして会うことができてよかった。
憎み続けることなくあきらめられる。
少なくとも苦しんでくれたのなら、もうそれでいい。
既に今まで使っていた肉体がなくなってしまっている俺は、新しくつかうための肉体をつくることなく…ただ辺りを漂う靄のようになった。
誰かに呼び出されないかぎりは形をもつこともなく、漂うだけ。
思考は次第に状態と同じく溶けて、消えてなくなるだろう。
そうして俺は俺をとぎれとぎれにつなぐ頃。
「なぜ」
新しい姿を得る。

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