空席2
転校生ともう一度会う機会があってもなくても、俺は学校行事をそれなりにもりあげ、それなりに消化しなければならない。
正直、あまり会いたくないんだが、転校生が化け物を呼び出してくれるってんのなら別だ。
アレが、俺のものになるなら、ある程度はなんでもできる。自負できる。
「なかなか上手くいかないもんだねぇ」
「そうか?こんなもんだろう」
滞りなく行事が進んでいた。
そのときは新入生歓迎会だった。
なぜこのような外れた時期にと思いはするものの、今までずっとそうしていたのだからと日にちは変えないで行っている。
その新入生歓迎会は、熱狂した。
人が…とくに、力を持つ人間たちが一気に集団で熱狂すると、いいことはない。
たいてい、この空間を化け物どものすむ空間と繋げてしまう。
俺は、生徒会テントの結界の下、溜息をつく。
熱狂していた空間は最早、阿鼻叫喚だ。
仮にも能力があるはずの人間しか通っていないというのに、逃げ惑い、風紀だ生徒会だ、転校生だがてんやわんやだ。
俺は仕方なく、生徒会テントのマイクを手に取り、スイッチをいれる。
「テメェら、各クラスの結界のなか入れ」
去年もそれなりに化け物どもがでたんだから、それなりに対策してある。
行事を我慢すればいいという考えもあるのだが、化け物がでてこそのマツリといった感じもなくはない。
今年は特に酷いにしてもだ。
あとは、スイッチを切って、俺は待つだけのはずだった。
「かいちょう…!」
ひとりの生徒が、生徒会テントに近づいてきた。
俺の戦闘スタイルは野蛮であるとか、浅知恵であるだとか、俺が猿であるとか能無しであるとか。
とにかく悪口は尽きないが、そういう悪口を普段はいっている連中は、こういうとき、弱い。
泣きついてくる。
俺は、それを冷めた目で見ていたのだろう。
リツがこわーいと、茶化した。
リツ自体、俺の悪口をよく思っていないのだから、俺の態度が酷いとはいわない。
「こんなときくらい、役に立てよッ!盾くらいになれよッ」
役立たずだといわれた覚えは無いのだが、そう思ってくれていたのだろう。
混乱し、助けを求めた挙句、最終的に冷たい視線しか向けない俺に対し、そんなことをいいだした生徒に、俺は鼻で笑う。
「俺の方こそ、助けてもらいたい。俺は能無しで、役立たずなんだろう?お高貴ですばらしい能力者に助けてもらわないと、なぁあんにもできねぇえんだろ?なぁ?」
笑ったまま続けた言葉に、そいつはさらに口汚く罵るのみだ。
だいたい、この生徒会テント内の結界に入った時点で相当なことが無い限り、化け物どもに襲われることは無い。
混乱しすぎだ。
ちらりと戦況を見る。
転校生は大変優秀らしい。
ばっさばっさと敵を薙ぎ倒し、少なくなったとはいえ、混乱して人の話なんて聞こえてない連中を逃がしている。
「がんばるねぇ…」
「そうだな」
もう、俺を罵っている一生徒のことは無視して、俺は、パイプ椅子に座ったまま、足を組んだ。
「今回、武器は取り上げられちゃったもんねー何もできない、とはいわないけど、でてかないつもり?」
「そうだな。でたところで、足手まといだろ」
「でも、歓迎会はじまる前に、大規模な術、組み立ててたじゃない」
俺は肩をすくめる。
未だ力がない俺には、自らの力を使わなければならない術は使えない。
だが他の力をつかうもの、術そのものがある方式により、力を持つものは別だ。
他の力は、俺が扱う武器であったり、自然の力であったりする。
しかし、自然の力を行使すると、そこにあったものを借りなければならないわけで、遣いすぎると雑草すら生えなくなったりもする。
俺はその手の力を使う方法はしっているが、この学園は、その力を大方結界に循環させるように利用している。
そこで、力を使ったら、ただでさえ弱っているのに、悪戯に結界をこわしてしまいかねない。
それならば、術自体が力をもつ術を行使すればいい。
しかし、それはひどく手間をかけないと、発動しない。
手間がかからないものは、術として弱い。
「毎年のことだからな。さすがに用意もする」
ガンッとパイプ椅子の前にあったな長机をける。
ここに殴りこんできた生徒がビクリと肩をゆらし、忌々しげに俺を見る。
相変わらず無視だ。
長机の下に隠れていた小さな穴を眺めたあと、俺はパイプ椅子の傍らにおいておいたペイントボールの入った箱を手にとり、一息つく。
「うまく作動するといいねぇ…」
「ああ。ちゃんと化け物ども全部、中に入ってくれたしな」
俺はペイントボールを投げる。
五個投げ、最後の一個を小さな穴の中に入れた。
ペイントボールが置いてあった場所にあった、先の尖った棒をそれに貫通させる。
インクが飛び散らないようにやるには、ちょっとコツがいるが、まぁ、できないことは無い。
そして、俺の術は完成する。
すべての化け物どもはその場から動けなくなる。
ある条件の力を受けていない限り。
「うん、完璧。これができる人はすくないよー?だって、少しでも計算を間違えちゃったら、発動しないもんね」
「ああ、俺も、睡眠時間削ったかいがあった」
逆結界をはるのは、逆巻きに行わなきゃならないから、余計手間取った。
「ほんと、すごいことなのに、評価ってのは低いもんねぇ…感謝すべきなんだよ」
リツが呆然と結界内で腰抜かしてるやつに、あてつけを言った。
「がり勉会長ってのは、まちがいねぇけどな」
「がり勉ってやっかみだもんね。わるいことじゃないもん。勉強した人がえらいの」
呆気にとられたのは、この場にいた生徒だけじゃなかったようだ。
転校生がこちらに振り返っている。
生徒会連中は俺の行動をごく当たり前のように受け入れているし、風紀連中にいたっては、やれやれやっと終わったかという顔をしていた。
next
/
iroiro-ftop