空席3
そのクラスは、不可解な事件が多く起こる。
生徒の大半は毎日気分が優れず、教室に寄り付きたがらない。
また問題があったと報告があり、武器を片手にやってきたそこには、そこに居ることが珍しい生徒が薄ら笑いながら、化け物を殺していた。
俺の出番はなかったな。そう思いながらも、状況を確認、報告書をつくろうと、教室の中に入る。
その際、教室を出て行く生徒と擦れ違う。
重なったアクセサリーが音を立てる。
後ろにいたリツが笑いながら、そいつに声をかけた。
「ねぇ、君が話してくれる方が早いんじゃないの?」
ソレはもっともで、俺もそうしてもらった方が助かるのだが、この男はそれをしないだろう。
男は足を止める。振り返りはしない。
「化け物が出た。殺した。以上だ」
どこかで聞いたような声を持つ男は、坂上紅丈(さかがみくじょう)。
噂ではサボり常習犯でいつも屋上で煙草をふかしている男だ。
「そうか」
成績はそれなりにいいらしいが、サボりが目にあまり、さらに服装もひどいものだという。
いや、それは生徒会の連中にもいえることだ。
「おつかれさん」
俺はそれだけいうと、教室に居る連中の話も聞く。
やつは一度も振り返らなかった。おそらく屋上にいったのだろう。
やつが屋上に行くようになってからというもの、誰一人として屋上に行こうとしなくなった。やつが屋上に来る連中を片っ端から潰しまわったという伝説があるからだ。
真実はどうであるのかわからないのだが、俺は思う。
奴が、居なくなると息がしやすい。
奴が戦った後は、ひどく場が汚れている。
「このクラスの障害はアレのせいだと思うんだがな」
居なくなったと確信したからこそ呟いた言葉に、リツがまた、笑った。
「どうして?」
「あれは、瘴気まいてんだろ?…邪気もすげぇ。…目がいてぇんだよ、見えすぎて」
「あー…ほんと、よく見えてるんだねぇ、その目」
この世のもの以外が見える目は厄介でしかない。
「じゃあ、なんで、退学させないの?それで、一発じゃん」
「退学させる必要があるのか?あれが奴の体質なんだろ。解っていて入学させたんだろ、どうせな。あれだけ化け物簡単に殺せりゃそれでいいってこったろうけど」
この学園の理事長が考えることなどよく解らない。
それとも繋がりやすいここに案内して、瘴気をまいて邪気を集める奴を、人間の世界から追い出そうとでも考えているのだろうか。
ご立派なことだ。
俺は鼻で笑うと、教室に居る連中の話を真剣に聞き始めた。
「見えても解らないことはたくさんあるってことだねぇ」
リツがそんなことを呟いたが、教室にいる連中に次々と話しかけられていた俺には聞こえていなかった。
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