俺は本当に、自己満足で、守り続けた。
ひとは、魂になると見えなかった多くが見えるらしい。
俺を見ることができるひとも、少し増えた。
それでも、すくない。
そいつらは、俺を見て、恐れる。
魂をいれる器がなくなったそいつらには、俺は強すぎるということもある。だが、それ以前に、形が嫌悪の対象であるらしい。
せめて、もう少し、なじみのいい獣の形なら、よかったものを。
俺には形が混在しすぎた。
とにかく、守り続けた彼が、ひょんなことから、俺を見ることができるようになる目を手に入れた。
それは、不幸の目。
俺にとっても、不幸といえる、目。
彼は見た。この世界を見た。
俺は彼の目から隠れた。怖がられるのも、嫌われるのもいやだった。
彼が見えないときだけ、俺は彼を守る。
しかし、それも、すぐ、できなくなった。
彼を四六時中守ることのできる奴を、彼が捕まえたからだ。
訓練すれば、彼はひとにとって悪いものをけすことができるようになるといわれ、いや、そうするしか彼に道は無く。そして、彼は、俺を見れるようになり、俺のような存在を守護として契約した。
それは、ひとの形をしていた。
どうして俺は、形が違うのか。ひとでないのか。彼を好きになったのか。
何もできず、ただ、遠くから見ることもできないほど。
ひとの形をしていて、彼の守護をしているそいつは、強い。
ひとの形を保てもしない俺は、強いし、ひとには、そう、ひとにはよくない。
だから、近くて遠いこのゆがみが必要で、俺を行使するひとは俺を攻撃の手段としてつかった。
今はただ、彼が昔いた場所をながめ、思い出す。
「神様がいるのなら、意地悪だね。君ほど彼を愛したやつはいないだろうに」
「ひとである限り、俺とは相容れない」
彼を守護しているやつは、悪い奴ではない。
けれど、俺が彼の傍にいることをよしとしない。彼があの目をてにいれてしまったのも、俺という存在が彼に影響を与えてしまったせいだということを知っていたからだ。
「ねぇ、すこしだけなら、大丈夫だよ?君も少しだけなら、人の形になれるのだろう?怖がられないし、ねぇ、言いたいことを伝えなよ」
「一度許すと、際限ない。いつか、ばれる。優しいが、残酷だ」
「そうかもしれないね。けれど、君は彼に会うべきだ」
俺は、拒む。
怖いし、嫌われるのは、そう、いやだ。
ただ、もしも、伝えるなら、一つ。
「すまなかったと伝えて欲しい。あの目は厄介ごとしか運ばない。俺が傍にいたばっかりに、災厄が降りかかってしまった。本当はここにも留まるべきではない。さすがに、申し訳ない。だが、俺も、できた性格ではない」
「そう。伝えておくよ」
愛してるって。
そういって風景に溶けるそいつに、伝えるべき言葉が違うだろうと呟いて、俺は彼の昔いた場所を眺める。
そこから見える花の木は、何時からか葉もつけない。
やがて枯れて彼を悲しませる前に、俺はここから立ち去ろう。