空言1



「もし、かわってやれるなら俺はおまえくらいになってかわってやる」
眼鏡ごしに見た弟子が、唇を突き出し文句をたれた。
「師匠、あんたそんなこといって、今の俺ではなとかいうんでしょ」
確かにそうだ。
しかし、今の俺ではできないことでもあるのだ。
「……俺も頃合いを見計らってそちらにいく」
「ちょ、師匠丸無視ってひどくないすか?」
「いや別に」
けろっと答えてやると、弟子がひどい顔をした。
とある学園に退治屋として呼ばれた弟子に、俺は口角をあげてみせた。
「あそこにはニセもいる。何かあれば頼ればいい」
「え、頼ればいいって俺、顔しらな」
俺はなお、口角をあげたまま、弟子の背を押す。
「時間だ、ユキリ、お兄ちゃんに挨拶」
俺の足にまとわり付いた小さな子供が、弟子を見上げて手を振る。
「いや、あんた、ちょ!ししょー!!」
そうして、学園の迎えに引き渡した弟子を見送りながら、俺はポツリと呟く。
「めんどくせぇ」

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