占いに出たとおりに行動すれば出会える…というには高所は多すぎる。
俺は屋上で出会った人のいうとおり待つことにした。
待てば待ち人ってのはくるのかなぁとぼんやり黒板を眺めていると、いつのまにやら授業はおわっていた。さらば数学、こんにちは現国。
と、その前に短い休憩があるわけだが、その短い間にも出会いという奴はある。
しかも、こちらはご遠慮したい出会いだ。
出会いが吉ってなんだ、凶じゃねーかと星に八つ当りする。
「おまえさんが、転校生か?」
そいつは、強面だった。
強面ながら、学園のルールなのか、もうそういうものなのか、所謂男前といわれるタイプの人間だった。
この学園の風紀委員長だ。
俺は一応尋ねる。
「あなたはニセさんですか?」
楢遼(ならはるか)と、ニセのニの字もないのが風紀委員長なのだが、愛称とは時になんの関連性もないものだったりするものだ。
「あ?」
予想通り違ったらしく、風紀委員長は微妙な顔をした。
おそらく姫がいっていた品定めにやってきたのだろうが、風紀委員長がニセでないのなら、俺にはもう用はない。いや、もう一つだけ聞いておいてもいいかもしれない。
「じゃあ、ニセって人知ってますか?」
「仁井(にせい)なら風紀にいるが」
その人ならそうかもしれない。しかし、俺は待つと決めたので、ちょっとだけ冷静に判断した。
「PBCに所属してたりとか」
「ああ、してたな、確か」
俺は思わず席を立つ。
その仁井さんとやらはきわめて、ニセである可能性が高い。そう、極めて。
「風紀委員長!」
「お、おう…」
「今すぐ、その仁井さんとやらにあわせてください!」
「お、おう…」
風紀委員長の手を両サイドからがっちりつかんで、お願いをしたのは、やりすぎだった。
本当に落ち着いていたのならしないことだった。
残念ながら落ち着きというものは、『もう少し落ち着きを持つとなおよいでしょう』と成績表に書かれるほど、ない。
教室で声をかけてきた当初と違い、風紀委員長がひき気味に応対していても、押していける俺はある意味クレイジーだった。
だから、後々、姫におまえってバカだな…といわれても仕方なかった。
姫、せっかく気を使ってくれて、教室で接触しないようにしてくれてたのに、ごめんよ。