仁井さんがいるその場所は、なるほど、高所だった。
風紀委員会室はとある校舎の最上階にあった。
「ええっと…PBCから派遣された、三木、です」
俺の名前さえいえば、心あたってくれるかなという感覚で自己紹介をした。
仁井さんは、しばらく俺をみてポカンとしたあと、手をたたいた。
「ああ、PBC会長のお弟子さんの」
この言い方から推測すると、仁井さんもニセではないということになってしまう。
俺はがっくりと肩をおとしつつも、一応尋ねた。
「あなたは、ニセさんですか?」
「ニセさがしてるの?ニセなら今の時間は………うーん、バタバタしてるしわからないなぁ」
返ってきたのは意外な答えだった。
「ニセさんを知ってるんですか!?」
「知ってるも何も、有名人だよ。ただ、ニセって名前は流布してないみたいだけど」
ちょっと無駄足踏んだと思ったけど、意外と占いってバカにできないというか、屋上の人よありがとう!俺は気持ち屋上に礼をした。気持ちだけ。
「あのっ!あわせてくださいとかいいませんから!お名前教えてもらえませんかっ?」
「ニセの?あ、うん。いいよ。神楽坂仁瀬(かぐらざがじんぜ)…仁義の仁に渡良瀬川の瀬で仁瀬。ここではジンのが通りいいね」
「ありがとうございますっ!早速探しに行ってきます!」
やはり落ち着きなかった俺が悪かったのだけれど。
ぽかん…とした風紀委員長が俺がいなくなった風紀委員会室でぽつりと零した。
「あいつ、しらないのか…」
「知らないんじゃない?普通、知ってたらまつでしょう、確実性のある時間帯まで」
「そうだな…ああ、転校生だしな…」