俺は前の学校で生徒会長とかやっていただけあって、成績優秀、運動神経抜群で、容姿を褒めない人がいない。
嫌味かナルシストかといわれるような自覚であるが、人に騒がれていたというのは事実だ。
しかし、この学校では、もう一つ優秀でなければならない項目がある。
所謂、能力者と言われる部類の人間が必要とされる能力。
普通の人間が見えないはずのものを殺す能力に長けていなければ馬鹿にされる。
俺は、其の能力に長けていなかった。
当たり前だ。
そんな化け物だのがいると思ったことすらなかったのだから。
もちろん、そんなことおもったことすらなかった奴が、そういう能力を使うために必要な力がないってわけじゃない。
見えない奴は大抵、その力が強くないってだけの話だ。
もちろん、例外もいる。
それが今、宮代野が見に行った転校生だったりする。稀代の天才らしい。
理事長がわざわざ招いて、ここに通わせたそうだ。
本当は退治屋として名高いそうで、生徒会と風紀委員会には貴賓であることが伝えられている。
彼は、生徒としてこの学校にいてもらうためにここにきてもらったわけではないのだからと。
もとは普通の人間だったとか、数奇な運命でだとか、そういうので、転校生は化け物を殺す職業に就いた。
恐らくは俺も、その数奇な運命でこの目を手に入れた。そして、幸運にも理事長に発見されて、自分自身を守る手段を得た。
だが、俺には転校生と同じような莫大な力はなかった。
見えない奴らと同じような弱い力。
今もそれは変わらず、弱い。抵抗力だけは強いが、弱い。
しかし、俺には見える連中すら見えないものを見てしまう見えすぎる目と、化け物どもから好かれる体質とやらがあった。
これは、俺と契約中のやつからきいたのだが、俺が生まれたときからもつ体質らしい。
たまにそういう何の力ももたないのに、好かれるやつってのはいるそうだ。
俺がそれを自覚できずにいたのは、化け物連中の中でもいい奴悪い奴ってのがいて、それに平等に好かれた結果であるらしかった。
俺はそのどちらにも生まれたときから好かれに好かれ、知らず知らずのうちに抵抗力だけが強まったらしい。
それはそれとして、自分に力がないのなら、なにか変わりになるものが必要だ。
俺は、まず、好かれているということを利用した。
最初は守護として契約し、今は式となったそいつを使うことにしたのだ。
その次に、一人でどうにかするために、体術を学んだ。
強力な道具を使ってやつらを殺す能力を得た。
それだけだ。
今でも術だのは知ってはいるが、力が必要なものは発動しない。
馬鹿にされてしかるべきところをカバーして有り余る式と能力で、馬鹿にされつつ崇められているといった状態だ。
敵も多いが、味方も多いってところだ。
俺は眼鏡をかけなおす。
ウエイトレス代わりの式が飯を運んできた。
「そう思えば、転校生どうだったの?」
「稀代の天才ってのは本当なんじゃねぇか?式が鬱陶しかった」
「会長がいうんだからそうだよねぇ」
俺の目は、気配を隠していようが姿を見えないように別の空間にいようが、ゆがめた世界をつなげて、今あることにして見てしまう。
それが過去のことでも、現在のことでも、未来のことでも関係ない。とにかく見える範囲の存在しているすべてを見てしまう。
見えるものを見えないようにするためにコントロールする術を学んでいくうちに、次第に目の力が強くなって、補正をするために眼鏡もかけている。
それでも、見えすぎる。
「でも、会長はそう判断したのに、転校生の近くに行かなかったんでしょ?なんで?」
「確かに天才には拘ってんだけど、あれは契約してる奴が多すぎる」
しかもことごとく好かれていた。そんな奴が、俺の欲しいものをもっているとは思わない。
「ふーん。会長って、何がほしいの?」
尋ねてくる勝木も俺が接触した天才の一人だ。
コイツも無理だと俺は判断したから、俺は探し続けている。
「化け物」
「は?」
「誰が見ても嫌悪感表すような化け物」
「…マニアックなシュミ?」
「それに関しては、ノーコメントだ」
わかって貰おうとも思っていない。