「人間って呑気なもんだよね。こうなるまで待つなんて。…ころしたいの、かな。人食らいな連中」
「そうだろうな、できるなら」
だから、できるだけ殺しておこうということなのだろう。
「さて、そろそろ動かないと風紀委員長に殴られちゃうかもだよ」
「俺が行く方が迷惑だろうに。会長の責務を怠るなとは熱いよな、あの野郎も」
俺が現場に向かうと、漏れなく人間を襲う化け物が増えてしまう。
化け物どもに好かれる体質と見えてしまう目は伊達ではない。
珍しい人間ってのは、化け物どもにとっても珍しい。珍品は何時の世も嫌悪されるか好かれるかのどちらかだ。
俺は、机の横に置いてある得物を手に取る。
種類的にはサパラとか呼ばれる剣に似ている。
長ぇエスみたいな刃で、意外と重たい。見栄えはあまりよろしくないが、見つけた武器のなかじゃ、これがいちばん俺に向いている。
皮の袋に入ったそれを肩に担いで、俺は生徒会室をあとにする。
「俺がピンチにでもなったら、助けにこねぇかなぁ」
「来るかもしれないけど。死んじゃったら会えないし」
できるだけ避けたい選択肢だ。
袋から剣をだして、一振り。
俺に惹かれてやってくる化け物連中が、切れる切れる。
ただの物理攻撃はきかないのだが、この剣は特別だ。
そういう連中に利く武器を俺が探したのだから当然だ。
そして、俺はその武器を使うことをいやというほど訓練したのだから、使えて当たり前なわけだ。
今も、腕に磨きをかけている。
「刀とかなら、すごくかっこよかったのにー」
「あれは繊細すぎんだよ」
「いわくつきはどれも繊細じゃないよ」
確かにそうであった。けれど、性に合わないものは合わない。
一度やつらの攻撃を避け、地を蹴りつけ、剣を叩きつける。
この剣は、繊細な技巧を必要としない。そこが気に入っている。
俺は手っ取り早く、力がほしかった。
「あれらはそのかわり、主人選んだりで面倒だろうが」
「そうだけどさー…それだって、ここでつくられてないってだけで、いわくついてんだよ?」
「別に、俺に合うならそれでいい」
「ちぇー、実用性で選んじゃってー」
そういいながらも、先ほどから、化け物どもを片っ端から屠っている式の律(りつ)にはいわれたくはない。
「リツ、面倒だから、テメェが殲滅しろ」
「そんなこと言ってると、剣が錆付いちゃうんだからね」
「そういうことがないから、いわくついてんだろうが」
「もー…」
いやそうにしながらしっかり従うあたりが、律儀だ。