化け物との出会いは、俺が知らなかっただけで、随分前。
化け物は俺が中学校に上がった頃から守り続けた。
それをリツが『愛してる』と称した。
化け物はそれを『申し訳ない』といった。
俺はそれを冗談じゃねぇと思った。
その結果、俺は化け物と会うこととなった。
俺はこんな目はいらなかった。
拮抗していた化け物どもの争いは、化け物によってなくなり、化け物の気に宛てられ続けた俺は抵抗力こそさらに強くなったものの不幸にも近しくなったらしい。
そして、目を貰った。
いらなかった。
コドクがくれたわけではない。コドクが悪いわけではない。
けれど、誰かのせいにしたかった。
俺はコドクが何処にいるかリツに頼んだ。会いたいといった。
リツは、あわせてくれた。
それはもう、気持ちの悪い化け物に会わせてくれた。
俺の八つ当たりを受けるにふさわしい化け物だった。
まだ慣れない武器を、振りかざした俺に、そいつは、逃げなかった。
嫌な感触。今でも覚えている。
とても、嫌な、感触。
抜けない得物をそのままに、そいつは、たぶん、手であろうものを俺に伸ばして、そう、たぶん、笑った。
「会えてよかった」
その意味を、俺は、理解できない。
次に化け物にあったとき、化け物は化け物の姿をしていなかった。
もう二度と会うことはないだろうと思っていた。
俺にただ、後悔と嫌な感触だけ残したその化け物。
まるで人のようだった。
毎晩、殺してしまったかもしれない化け物への後悔と、あの嫌な感触にうなされた。
毎日、あの化け物の言葉と、俺を労わるよう出して触ることもなかった手を、何故か解った表情に、死にたくなった。
あの化け物は、何故、申し訳ないといった?
あの化け物は、何故、俺を守った?
どうして、リツはそれを愛してるといった?
俺は、気が狂いそうだった。
自分が今まで触れることのなかった世界に投げ出されたときでさえ、自分自身を守ろうと、部屋の中にこもった。
そのときは、自分自身に絶望していた。
「すまない。俺は、生きているし。死にはしない。もう、会うこともない。ただ、会えたことが嬉しかった。…嫌われてしまったこと知ることも、できた。諦めることが、できる」
それは、俺の悪夢の終わりで。
本当に会ったかどうかすらわからない。
都合よく見た夢だったのかもしれない。
それでも幻のような化け物は手を伸ばして、引っ込めて、諦めたように苦笑する。
目が覚めて、俺は暴れた。
好き放題部屋を荒らしたあと、リツに言った。
「あれに会いたい」
「…うん、いいよ。僕もさすがに、もうどこにいるか解らないけど。どうにか会おう」
今でも、あの化け物をおもうと、気が狂う。
会わなければよかった。