古城×鬼怒川×古城




 グリンピースは確かに豆だ。
 俺は豆ご飯を前に、眉間に皺をよせた。
「……せめて甘納豆にしてくれたらよかった」
 五色豆でもいい。俺は甘いものが食べたかった。
 朝から豆を持った風紀委員と生徒たちに追いかけられ、挙句の果ては友人にまで二回も豆をぶつけられたのだ。寮の部屋でくらい待遇を変えてくれてもよいだろう。
 五穀サラダも、枝豆も、ヒヨコマメのスープも美味しい。チキンのトマト豆煮込みなど、腹の中に豆を仕込む力の入れようである。ここぞとばかりに豆を使ってくるくせに、何故か煎り豆だけは出さない精神は見上げたものだ。
 しかし、それでも俺は、呟かざるを得ない。
「豆大福、いや、あんこだけでも」
 ここまできたら羊羹であっても俺は豆豆しくなれると、ひと月前なら喜ばれただろう風習を呟き、ありがたがって食ったに違いなかった。
 作ってもらったこと、豆をぶつけないことにについては、感謝しかない。しかし、俺は、甘いものが食べたかった。
「何か?」
 だが、古城は上機嫌で俺のぼやきを聞くばかりだ。最近気がついたことだが、古城は機嫌が良くても悪くても、俺に甘味を用意しない。機嫌が悪いといわずもがなであるし、機嫌が良いと俺の反応を楽しむために手の込んだ甘味以外の料理を作ってくるのだ。
 最後に出てきた豆おかきも美味しかった。お茶請けとして最高だと思う。
 だがしかし、俺は何度でもいいたい。
「甘いものが食べたかった……」
 がっくりと肩を下した俺に満足したのだろうか。
 翌日、古城は甘納豆、五色豆、羊羹……ついでにドラジェを用意してくれた。