晃二×皐




 ふざけて襲い掛かると、玄関でぎゅっと抱きしめられる。
「……逃さない」
「いやいや、さっちゃん、ここは鬼は外でしょ」
 可愛さのかけらもない鬼の着ぐるみというか、蛍光黄緑のタイツに腰みの装備で、鬼のお面を被った俺は、スタイリッシュな福の神に抱きしめられていた。
 元生徒会と風紀委員会が鬼になって豆まきなどという、こちらの身が持ちそうもないイベントがある。これは例年、受験が終わった、もしくは受験の息抜きをしたい三年生がやる行事だ。
 去年はあの高雅院先輩が悪い子を襲うような格好をしていたし、お兄たまなどは教材のでかい三角定規を装備していた。
 この行事で面白いのは、鬼だけではなく福の神もいることだ。福の神は毎年何故かかっこいい格好をして崇められる。そして、福は内であるため、お部屋にお招きして一服したりするのだ。
 福の神は参加者の三年生のうち一人をくじ引きで決めるのだが、今年はそれがさっちゃんだった。おかげで三年生は用事がないかぎり全員参加だ。鬼である俺は蛍光黄緑ということでしこたま豆をぶつけられるはずだった。
「晃二は、うち」
「いやいや、俺、鬼だけど」
「晃二は、うち」
 二回も同じことを福の神に言われてしまうと、蛍光黄緑の身体をもった蛍光オレンジのヅラの鬼も大人しくなってしまう。……正直、豆をぶつけられるのが嫌なので、そういうことにしてしまい、大人しくこたつに入っていたいのだ。
「晃二、みかん、たべる」
 俺がこたつに入ってしまいたいことを見抜いたらしい。豪華なファーがついたコートからみかんが出てきた。文旦だ。よくそんなでかいみかんがポケットに入ったものである。
「それ、剥かないと食べられないじゃない」
「むく」
「そっか、いたれりつくせりだねぇ……」
 そうしてコタツで手だけで文旦を実だけになるまで剥いてくれたさきから食べていると、トモちゃんから電話がかかってきた。
 それからはちゃんと豆まきもしたのだから、めでたしめでたし……蛍光の鬼なんで、下敷きで豆はじきやがんだ!? って言われたりしたのはきっと気のせいだろう。