人生五十年といったら、まだ半分生きてない俺は青二才といっていいんじゃなかろうか。
けれど男と生まれたからには好きな人くらい守りたいではないか。
けして、その人より強くなくても。
古村藤衣(こむらとうい)。物心ついた頃には変な名前とからかわれ、中学校になる頃にはロマンチックとからかわれ。
とりあえず、やたら名前についてからかわれ、ついにやさぐれ、夜な夜な出歩く不良息子になったある日。
いつものくだらない喧嘩。
仲間内ではいちばんつよいけれど、あるチームを前にしてネコに追われたネズミ。
残酷にも獲物を弄ぶネコに、俺は釘付け。
黒い中に赤のメッシュの髪の毛を、小さく細い三つ編みにしてサイドに流した不揃いの髪。
やたら光に反射して輝くでっけー石のついたピアス。
ギラギラとした目が輝いているように見えて、ふと目のあったこちらにニヤリと笑みかける。
うわぁと思ったときにはフォーリンラブ。
惚れた!
だったわけだ。
…マゾじゃねぇから。
そのとき、ネズミは一応ネコに噛み付いて、とりあえずその人のチームに入れたけれど。
俺の地位はチームじゃ下っ端。
ヘッドカッコいいっすしびれるっす!といっている奴らの一部。
そんな奴が、ヘッド好きです付き合ってください!
キモいウザイ、シネカス。で終わりじゃねぇ?
ただでさえ、俺は男。ヘッドも男。
俺が絶世の美少年だったらまだしも、絶世ってなんだ、それうまい?というレベルでは。いや、けして不味くはない。まずい顔ではない。身長だってふつうより高いくらいだし、もてるほうだろ。下駄箱からラブレターの雪崩なんてみたことねぇけど。
「エー」
けど、それでも、俺が他よりヘッドより好かれてるという自信はあった。
藤衣だなんて名前、好きではなかったが、ヘッドが『とうい』を『糖衣』と脳内変換、挙句エーだなんて、どこの整腸剤だといいたくなるが、それが俺だけ特別のあだ名みたいでなんか気に入ってるし、それだけで覚えてもらえるなんてお得だろ。
そしてソレを呼んでは嬉しそうに俺によってきてくれるなんて、それはもう感無量だろ。
「なんですか?」
首をかしげると、俺のまわりにいた連中はささっといなくなる。
ヘッドが来たからだ。
俺もヘッドにソファを空けるべく足をおろそうとしたが、ヘッドが眉間に皺を寄せるので、止めた。
「何も」
なんていって、俺の腰を抱き締めて、ソファーに寝転ぶヘッドに俺は内心悶絶。
なんてことしてくれるの、この人…!