猫のきまぐれさに鼠はふりまわされる。


一匹狼って噂の遠田(とおだ)さんがヘッドと仲いいのは当然だ。
なんせ、うちの副だ。つまるところ、ヘッドの片腕とかいわれてる人なんだから、当たり前だ。
「いや、結構いつも一緒にいるオダがなんでここいるのって思ったが、一匹狼とか…うっわ、恥かしい」
ヘッドが楽しそうで何よりだ。
あの、『デート』から、数日。
ヘッドは、『嫌がらせ避けるのはこれが一番効力的っていうか、美形と仲良くしないことらしいけど、もう、仲いいし、俺、ダサいの飽きた』といって、髪を染め直した。
それはもう、綺麗なピンクオレンジに。
いったい、それは何処で売ってる染料なのですか。とききたくなる
色だったが、遺憾なく似合っていた。
濃い臙脂のメッシュをいれて、髪の毛を存分に虐めたヘッドは、それ以来俺にべったりだった。
なに、あいつ、調子乗ってる。ウザイ。
とかいわれる前に、俺も普段どおりの姿になった。
何故かヘッドとセットだと、非常にうけがよく、きゃあきゃあと騒がれている。
男子校なのに何故だと思うのは、もうやめた。
「恥かしいとかいうな、オマエの髪のが恥かしい色だわ」
「じゃあ、もっと恥かしく、かりあげて文字とか書くべきだった?ファッキンガイズ」
「喜ばれるだけじゃねーか?」
ヘッドと副と、俺。
軽くヤンキー集団ができているのだが、ここのおぼっちゃまたちは関係ない。
騒がしい。
そのくせ、あの三人は三角関係!?ってならないのも、遠田さまに手をだして!ってならないのも、たぶん、ヘッドの今の格好のせいである。
俺の隣に座って、身を寄せて。
「はー…喜ばれても」
腰に手を回して……、また腰撫でるのやめてくれないだろうか。
いや、いやではない。いやではないが、やめてくれ。
本当、人の理性を弄んで、楽しむのは。
「まぁ、お前らこんなとこでもいちゃいちゃしてるから、喜んだところで、ぬか喜びだろうが」
いちゃいちゃか…確かにまわりにはそう見えているだろう。
けれど、これはヘッドからの嫌がらせに相違ない。くそ、変な気分を起してはならない。ここは公共の場所、ここは公共のばしょ。
「そうかもなぁ。エー、今夜は寝かさないで、ねぇ?」
寝かさない!じゃなくて、寝かさないでね。ですか。
もう、理性って漢字が読めなくなるんじゃないだろうか。
ここ、は、こうきょうの、ばしょ。
魔法の呪文が遠い。
「……何やってるんだ、謳歌」
そうこうしていると、生徒会長がやってきた。
ヘッドをみてあきれているようだ。
俺は、俺様といわれているくせにわりと常識人に見える生徒会長にヘルプコールを…たぶんした。
したはずなのに、何故かマウストゥーマウスで、ちゅーときたもんだ。
あ、舌はいった。
結構うまいなぁ。
あーでもこのままってどうだ、男にやられてるとしても、俺の男としての沽券にかかわる?
と、突拍子なさすぎて、みょうなことに頭がいってしまったらしい。
俺は、生徒会長が喘ぐまでキスを堪能してしまったらしい。
生徒会長が机にもたれかかっている。
その場はしん…としてしまっていた。
「……ごちそう、さまでした…?」
思わず言ってしまった言葉に、反応したのはヘッドだった。
ものすごい速さで生徒会長にえっぐいキスをした。
俺のベロチューもかくやというそれをうけて、一匹狼瀬名さんが、さすがに止めにはいった。
「おま、なにして…いや、コムも会長も!」
あたりは相変わらずしん…としている。
「エーのちゅーを奪い返しただけつーか?」
ヘッド、それはちょっと違うと思うんですが。
とは俺も言えない立場である。
ただ、俺は呆然とするしかなかった。
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