ウタとコムの暴走の被害者である会長の貞操を守ってやってくれ。
だなんて命令をメールで受け取ったのは、二人が暴走したその翌日。
ウタのことだ。性的に暴走もしたんだろう。
放置された会長は、今、無事でいるのだろうか。
なんて思いながら俺は会長を探す。
うちの厄介な二人がすみません本当に。と心にもないことを謝ったのは昨日のこと。会長も、ウタと幼馴染だということもあって、仕方ない俺が悪かった。などといっていた。惚れるくらいの潔さである。
でも、それで貞操が危なかったら、潔くなってる場合じゃねぇんじゃあ…と思いながら、一応強姦現場に詳しい風紀委員たちの集まる委員室にいったら、そこには会長がいた。
探すまでもなかった。
「ああ…昨日ぶりだな」
と声をかけてくれた会長は、少し顔色が悪い。
「どもっす。昨日あれから、無事でしたか?」
一応聞いてみたら、会長は、ふ…と笑った。
「いや。ダメだった」
「ダメって、ダメって…ええ?手遅れだったんすか」
「一戦交えて、今、風紀に告発しにきたところだ」
「ちょ、あんた、呑気にいってて、平気なんすか」
「気分は悪い」
「気分どころの問題か!」
顔色は悪いが、そりゃあ、強姦なんかにあっちゃあ、気分も体調も最悪だろう。
「何か勘違いしてないか?後ろからやってきた興奮している連中を殴りすぎて気分が悪いだけだ」
おい、タチが悪いタイプかよ!
会長はそれなりに強いようだが、どうやら、血はあまり得意ではないようで、自分で殴っておきながら、他人の血に酔って気持ち悪くなっているらしい。
「襲われて怖かったとか、ありませんか」
風紀とはもう話もついているようで、とにかく会長がどう思っているにせよ襲われたには違いない。一応アフターケアのようなものに回ると、会長が鼻で笑った。
「まさか。怖いというより、怒りが強かったぞ。とにかく平気だから、あいつにはそう伝えとけ」
「バレバレすか。まぁ、伝えときますけど。暫くは俺が会長につくんで」
「いらねぇのに」
「まぁ、有象無象がうろちょろしてるくらいに思ってくれて結構なんで」
「こんな目立つ有象無象がいるかよ」
今度は楽しそうに笑う会長に、意外と普通の人だな。という感想を抱いた。一方的に守れといわれたが、この分なら嫌な思いもしなくてすみそうである。
「じゃあ、それなりに目立たないようにしておくっす。…まぁ、なんか、それでも気になるってんならキスでもしてください」
悪戯心というか。冗談だったわけだが。
会長は、それでいいのかと、キスをしてくれた。
おい、それで今、こうなってんじゃねぇのかよ!
と思ったため、俺は反省してもらうために、あの二人と同じ行動に出た。
まぁ、確かに会長は……ごちそうさまです。