猫は鼠を追いかける。


あいつは週末にしかここに来なくなった。
それで我慢できたのは一ヶ月の間だけ。
一ヶ月すぎたら、あいつは週末にくるのすらマチマチになった。
なんなんだ。
毎日苛立って毎日、爪なんてガリガリ噛んじまって、皮なのか爪なのかわかんねーきたねぇ指を見て、ナンバー2が俺に教えてくれた。
「コムは学校が忙しくてなかなかこれねぇんだよ」
「はぁ?学校?意味わかんねぇよ、さぼっとけよ、んなもん」
「夜な夜な歩き回ってたら全寮制の男子校にぶち込まれたんだとよ。災難だよなぁ、コムも」
全寮制の男子校。
この辺で有名となると、好明(こうめい)高校になる。
進学校として名高く、私立の金のかかる学校としても有名だ。
裏口…とかも、できるんじゃねぇのって噂もある。裏口、ねぇ。
裏口…。
俺は、学力云々は置いておいて、金だけは有り余る家に生まれた。
裏口ができるのなら、札をつんで、とりあえず学校はいって、あいつに会うのもいいかもしんねぇ。
なんて思って、俺はわがままを言ってみた。
そうか!とうとうやる気になってくれたか!と親父は感涙しながら肩をたたき、お袋は大丈夫なの、ウタちゃん!全寮制なのよと過保護な涙を流した。
俺は、へらへら笑って、知り合いもいるし、幼馴染の陽ちゃんがいるから平気だよ。といい子ぶる。
そんなわけで簡単に裏口入学が決定した。
チーム面子には「ちょっとヤマこもってくる。週末にはもどってくるわ」といっておいた。
まず、幼馴染の陽介に連絡を取る。進学高校の学年主席は、陽ちゃんが一緒なら。とお袋の信任が厚いしっかり者だ。
「陽、俺、そっち行くことになったから」
『って、好明に?あんなヤマ勘弁っていってたじゃねぇか、どうした?』
「あー山は勘弁なんだけど、ちょっとそっちにさー…たぶん一年に、俺のかっこいくてクールで素敵なダァアリンがいると思うんだわー会いたくて会いたくて爪ボロボロだから、そっちいきたくてー…裏口」
『はぁ…裏口…ああ、まぁ、いい…こっちくるなら、その容姿どうにかしとけ。襲われるぞ。こっち性質悪いのいんだよ』
「どうにか?どうやって?」
『変装、とか?』
「えー…変装…あー…地味ならいんだろ地味、なら」
『まぁ、そうか。あ、茶髪とか似合わないな』
「わるかったなぁー明るい色、似合わなくて」
そんなわけで、気に入ってるメッシュの名残が少し残った茶髪に大へんしーん!して、一応地味を目指して今、そこそこ流行のレンズデッケー黒ブチ眼鏡装着。…目はもともとわりんだよ。
んで、オーダーメイドとかいって、はかりまくられて作られた制服をきちーんと装着。
あー地味。超地味。
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