告白されて三日目。
どうしても諦めきれないといって、迫られて、何故かシングルベッドにもう一人。
明るい髪に、腰にしがみついて離れない腕には銀のブレスレット。
「なんでこうなった…」
頭痛がおさまらない。
それは、絵に描いたような地味っぷりを発揮する俺が急に告白されたことからはじまる。
下駄箱に手紙。
放課後の裏庭。
初めてのラブレター。
そして裏庭にいたチャラチャラとしたイケメン。
呆然のあまり、意外と古式ゆかしいな、三谷センパイ。とか思っているのがよくなかった。
「板倉くん、好きだから、付きあおう」
まさに、ぎゅって感じで俺に抱きついてきたチャラいイケメンセンパイは、三谷光晴(みたにみつはる)と言う名前のヤンキーだった。
甘いマスクが笑えば女はころりだなんてよくいわれるセンパイなのに、何故、クラスで目立つこともなく地味に、むしろオタクじゃね?といわれるくらいの人間に、告白なんてしているのだろう。
ヤンキーのくせに、人気者なセンパイは、俺に笑いかける。
残念ながら俺は男で、ころりとはいかない。
「す…き……?」
とりあえず、好きの意味が解らない。
センパイに告白されているという時点で意味がわからないし、きっとこれはなにかの間違いと思いたいのが、男に告白された男の性だと俺は思う。
「…、マジ、です…か…」
「…マジじゃなければ、男になんて告白しない」
いや、罰ゲームとか、あるだろう。
俺はなんとかその告白を亡きものにしようとしていたが、センパイは至って真剣だった。
「う…あ…ごめん、なさい…」
男と付き合うということはこの際置いておいたとしても、センパイと付き合おうという気がまったく起きないのだから、ごめんなさいをするしかないわけで。
センパイは一気に眉間に皺を寄せると怖い顔で俺を睨みつけてきた。
…これは、逃げるが勝ち、か…?
などと思いながら、その顔から目をそらせないでいると、センパイの顔がだんだんと歪んでいく。
こわいというよりも、汚いというか。不細工。
美形も泣いたら不細工になるんだなぁと感心しているのは、もはや現実逃避だ。
俺の目の前でセンパイは泣いた。
「すご…すき…ッ、ダメ?俺、じゃ、だめ…ッ?」
不覚にも、つっかえながら不細工な顔で泣くセンパイがかわいいなぁと思ってしまったのがきっとダメだったのだ。
でも、そのときは心を鬼にしてというか、本当に、センパイと付き合ったあとのリスクだとか、センパイのことすきなのかとか、好きじゃないし、男と?とか色々あって、うんとはいえなかったのだ。
「ごめんなさい」
二度目のごめんなさいに、センパイはそのときは手を引いてくれた。
その、三日後。
さて、寝ようか。としている俺に乗っかるセンパイ。
「やっぱ諦められない」
で、ベッドの上で格闘して、俺の断固拒否宣言にセンパイが泣いた。
だめだ、この泣き顔弱い。
って気がついたらアレよアレよで…まぁ、最初にもどってくるわけだ。
頭が痛い。
そして、腰にしがみついて離れなかったセンパイが俺に起きて、笑いかけて曰く。
「今日から、俺は板倉くんの彼女ね」
ときた。
いや、性別違う…いやいや、俺がやったから俺の女ってこと?いや、だけど、いや。
といったところで、俺がやってしまったのだから、責任は取るべきで。
「はあ…」
と生返事をしてしまったわけだ。