俺の恋人はかっこよすぎる。冗談抜きで、かっこよすぎる。
告白した当初は地味だった。今だって、ほっておいたらあっという間に地味になる。
でも、俺はかっこいい恋人を自慢したかった。バカにされてるのを見返してやりたかった。
それがそもそもの間違い。
俺と一緒に居たら危ないといって、合気道をやらせた。次第に悪かった姿勢がよくなって、背がすらりとのびた。
合気道に意外とはまった恋人は身体も鍛えた。
もともと太っていなかったけれど、身体が絞られてきれいになった。
面倒くさがってなかなか切らない髪の毛は俺が切ったし、髪質にあってなかったシャンプーもかえて、泊りの時はいつも俺が洗う。
髪の色もかえようかなと思ったけれど、黒髪似合うし、硬派でいいなと思ってそのまんま。
視力はもともといいほうで、恋人を格段と地味にしていた髪型と姿勢がかわっただけで、すでにかっこよかった。
でもあっさりした顔立ちだし、何かアクセントが合ってもいいだろうと思って、俺は髪に隠れる恋人の耳の軟骨にピアスをいれた。
ちらちらと見えるピアスが色っぽくて大成功だと思った。
でもやりすぎたなぁと思って、ちょっとダサいのにでもなんだかいいなと思える伊達眼鏡を恋人に着用するようにすすめた。
恋人は嘘みたいにもてた。モテモテだった。
俺がつまらなくなるほどもてた。
でも…いまさら前のようには戻したくない。
髪洗ってるときは至福の時間だし、髪切ってるときに寝ちゃったりしてるの見ると可愛くおもうし。
眼鏡はなかったらなかったで色っぽいし。
色っぽいのは嫌いじゃないし。
でもだからって、なんで!
なんであいつは、生徒会書記に選ばれてしまったんだ。
「なんで?ねぇ、なんでぇ…?」
板倉恵司(いたくらけいじ)。俺が好きで好きでたまんなくて、告白してなし崩しで付き合ってもらって、いまに至る、後輩。
大好きな恋人。
「俺が一番聞きたいです…」
ソファに座って苦笑したケージは、かっこよかった。
「ケージーッ」
思わず後ろから抱きついてしまうのは仕方ない。
でも、かっこよくても、恋人が生徒会なんかにいるのはすごくいやだ。
多くの生徒に見られる立場ってのがいやだ。
「…ケージ、生徒会やめない?」
「生徒会やめたら風紀に入れられるだけですよ?」
なんて、ケージはいう。
それもいやだ。
ケージは意地悪だ。