デートデート。校内デート。
普段から、デートだのランデブーだのお付き合いだの愛人だのといっているから、深い意味なんてないと思われてそうだが、初めてのデート。
エーとのはじめてのデート。
鼻歌交じりに手を引っ張って歩いて、たまに危なっかしい俺を引き寄せて止めてくれるたびに、外野が溜息の嵐。
なんなわけ、この学園。なんか文句あんのか?
一応ちゃんと説明してくれてる。
四月にきたばっかだからわかんねーとこあんのかなーとおもってたら、風紀になって走りまわされたとかで、結構把握してるんだと。
特に強姦現場とか、制裁現場に詳しくなったとか。おっそろしいことしてんじゃん、ここの生徒諸君。
あーそれにしても、エー。
相変わらずいい男。
眼鏡ないせいで、眉間に皺寄りっぱなしだし、目つきが刺さりそうだけど、冷たい雰囲気がすげーイイ。
人なんて素通りしそうな目で、まわりをみて、近寄るなってオーラがでそうなくらいまわりを切ってすててる感じがある。
でも、俺には優しいんだから、たまんない。
「…そっちはダメです。今、強姦現場取締り中みたいです」
俺が知らない間につけたイヤーカフは、イヤホンだそうで。
金持ちのご趣味でつくった高性能なそれで、風紀委員は連絡とりあったりするらしい。
ちなみに、マイクはペンになっているそうで。意味もなく高性能。
マイクは…なんというか盗聴器の送信機にちかいらしいけどな。
一応、オンオフ機能があるので、盗聴はできないようだが、スイッチ切ってなかったら危ないらしい。
「強姦とかマジあんだ、この学校。こっえーの」
ケタケタと笑うと、あいつは苦笑する。
俺には、関係ないとかそんなこと言ってるわけじゃねーの。単に、確信してるだけ。
だって、守ってくれるんだろ。エーは。
なんとなく、確信してるだけ。
エーの手からこぼれたら、それはしかたない。誰が悪いって、襲ってくる奴が悪い。
防衛しない奴も悪いけど。
だけど、なぁ、やるなっていわれることやってるやつが、一番悪いにきまってる。
だから、俺は容赦しない。
たとえばエーの手からこぼれて、俺が襲われたとして、エーがそれを悔やんで辛いのなら、俺は俺を襲ったやつを許さない。
たとえば逆にエーが誰かに襲われて傷つくのなら、俺はソレを叩き潰す。
そういうの、繰り返すんだろ。知ってる。
誰かがやめなきゃ連鎖するんだろ、知ってる。
でも、その誰かが俺である必要は?
さきを考え、できうる限りの残酷な仕打ちを与えるのが、俺であってはいけない理由は?
無反応が一番いいのかもしれないし、そういうのせずに、アフターケア回るほうがいいのかもとはおもうけれど。
なぁ、俺の憎しみは何処に消えるんだ。
消えやしないんだ。
周りのことが考えられるならやらない。でも、俺はそれを放棄してる。
まぁ、最初っからそうならないのが一番なんだ。
用心はするよ?
どうにもならなかった場合、俺はそうなるんだ。という話。
俺が暗いこと考えてたら、エーは手を引っ張る俺を止めた。
何…?と振り返るとなんの確証もない言葉が耳元で囁かれた。
「大丈夫」
あ、そっか、大丈夫だよな。
俺はその言葉だけで、大丈夫だ。
にやっと笑って、再び歩き出す。
あーやっぱ、エーはいいわぁ。
「ちょ、あのおふたり!」
「すっごいかっこいい!見たことないんだけど…!!」
「手とかつないでる!付き合ってるのかなぁ」
「付き合ってるならお似合いのお二人だよね」
「あ、ふらってした」
「ああッ、引き寄せてささえた」
「はぁ…なんてお似合いなお二人…」