天使が連れてきたサモナーを論破して、自信喪失しているところを鬼のようにこき使うガルディオ先輩を眺め、自分自身の立場を真剣に考え、リオラ先輩と話しているヒースも放っておいて、俺はカイリ先輩に気になっていたことを聞く。
「カイリ先輩って、リオラ先輩の言うところの正確に把握してそれでも無視決め込んでる悪い奴ですよね」
カイリ先輩は少し眠そうな顔で、ふにゃりと笑った。
「まぁ…そうだろな」
「なんでそんなに詳しいんですか?」
「俺は歩き回る時間が長かったから。あと、そうだな、神様なんぞクソくらえだと思っていたのに、神様という存在を証明するためにこの世界に呼ばれたんで…その反抗心だな」
なんでも。
カイリ先輩のいた世界…というより国は、宗教戦争の真っ最中だったんだそうだ。
やっぱりカイリ先輩はその国では神童と呼ばれていたらしい。
「兵隊に神童もなにもあるか。ただの弾除けで弾丸だ」
暗い話だから、あまり話したくはない。とのことで、そこで切り上げたけれど。
カイリ先輩の処世術はもしかしたら、この世界で得たものだけではないのかもしれないなと思った。
ちょっと達観しているなぁと思うのは、そういう背景があったからかもしれない。
偶然にも俺と一緒にそれを聞いていたレントは少し複雑そうな顔をしてそれを聞いていた。
「セキヤみたいなァー、のんきなのモー、いんのにィ」
「いやいや、これは楽観的なだけで」
「それが呑気って、いうんじゃナイノー?」
言うのかもしれない。
結局この世界のことを聞いても、所詮夢だし。とか思ってる。
でも、夢だとして。
その夢が覚めた時、俺の世界にはテイマーのクドい先輩方も、シーラーの先輩友人もいなくて、もちろん大丈夫だなんて根拠のない保証をしてしまったヒースもいないわけだ。
後輩はなんのことなくいつもどおり唐突に変なこと言い出して、なんか変わった蝶に好かれて。
なんだか寂しいような、物足りないような。
現実であってほしいような、そうでないような。
そういうことは、考えたら負けだと思ってる。なるようにしか、ならないから。
「どうなんだろ。とりあえずさ、ヒースはもとの世界に帰してあげて、俺はなんか知らない英雄に祭り上げられて、それで、何か不都合とかある?」
「誰かがヤベー取り返しツカねー迷惑かけられない限り、それでもイーンでね?」
「そんなもん?」
「現地民としては、ソーンなモン」
そう言って俺の頭をぐしゃぐしゃにするレント。
「ヤーっパ。セキヤは、ノーミソお天気なくらいがイーワ」
「…失礼なこと言ってんなよ?」
腹に軽く拳をいれると、大げさに、おおいたいと俺から離れた友人を見たあと、空を見上げる。
もとの色と赤が混ざって、まるで夕焼けだ。