結局。
ガルディオ先輩がしばらくの間現地に残ってお仕事することになったらしい。
護衛役ってことで、カイリ先輩も残ったので、勝手に灰色コンビが姿を表して嬉しそうにぐるぐるしてた。
そのうちバターになるんじゃないかな。
はいはい、帰った帰った。って、先輩方と帰された俺は、後輩にすごく適当に説明をして、すごく適当に挨拶をして、学園へ戻ってきたわけだ。
……俺を睨むようにして見つめてくるヒースさんをつれて。
「睨むのやめてもらえないでしょーか」
「素、ですから」
「いや、違うと思う。っていうか、敬語とか態度とか」
「主人を前に、そのようなことは私のプライドが許しません」
そんなとこまでプライドなんだ…。と、やっぱり睨まれながら、歩く。
ちょっと間をとってリオラ先輩がニヤニヤしながらついてくる。
「…先輩何笑ってるんですか」
「いやぁ?奴隷ってだけでも面白いのに、それ…」
「……リオラ様」
「もう俺は魔王じゃないだろ。リオラでいい。それとも命令されたいか?」
「結構だ。主命にしか従わない」
なんか先輩と険悪なのは気のせい?
さっきまではいたーって普通だった気もするのに、どうして突然こうなんだろう。
学校に戻ってくるのはえらく簡単だった。
ミハイル先輩の竜のおかげだ。
ちなみに、リオラ先輩は空飛ぶ蛇に乗ってきたそうで…怖かっただろうなぁ…リュスト先輩。と、奇しくもサモナーの人たちへの同情と同じような感想を持ってしまった。
リュスト先輩は今現在、ミハイル先輩と一緒に…うん、いちゃいちゃしておいでです。なにしてる、とはあえて言わない。いつの間にか消えたのは確か。
「なぁ、セキヤ。これにどうやって勝った?」
「え、どうやってって…至って普通に。剣振り回して、セッカに手伝ってもらって、挙句剣突き刺して…って、剣突き刺したところどうなった!」
思わずヒースに飛びついて確認したね。
すっかり忘れていたけれど、怪我してるはずというか、負わせたはず。
しかしその怪我はすっかり消えていた。
「大丈夫大丈夫。人間とちがって回復力はすごいから。そんで?最終的にとどめは?」
「や、とどめは刺してないですからね!普通に喉元に剣を突き立てて終わりです。腹とか踏みましたけど」
「完璧に服従のポーズじゃん。よかったなぁ。本気で下の世話までしてくれるぞ」
「いやいや、しなくていいですから」
腕をあらゆる角度からみていた俺はしっかりリオラ先輩に答えたり突っ込んだりしながら、安堵する。
その間、やっぱり俺を睨んでくるヒース。
「ほら…先輩がそんなこというから…すごく睨まれてるじゃないですか…」
「あ?それ、睨んでるとおもってんのか?」
「リオラ」
いくらヒースがたしなめたって、リオラ先輩は止まらない。
面白いことは徹底的に弄るタイプだから…。
「あれは、睨んでるんじゃなくて、熱烈な視線で見つめてるんだって」
「え」
俺も驚いたけれど、かなり後方でだらだらと歩いていたレントが驚きの声を上げた。
その表情は、なんと奇特なと告げている。だまらっしゃい。
「え、や、好かれるというか…そういう要素がみつけられない…」
「勝負して勝ったんだろ?十分だ。服従のポーズまで取らされて…エムっけあるヒースにはときめきどころ満載だろ」
あ、特殊な趣味な方かーってレントは納得しているようだが、俺は納得がいかない。
「ちょっと待ってください。そんなわけ…」
ちらっと見たヒースが、首をゆるく横に振ってポツリと一言。
「事実です」
「ちょ…ヒース」
「経緯はどうであれ、その…惹かれているのは事実です」
「告白ってもっとロマンチックに焦らして素敵にやるべきじゃないの!?」
またそこかぁー…って呆れ声が聞こえたけど、気のせい!
そんなこんなで、何故だらだらと歩いていたかというと、学園の理事長に報告を直接しに行こうというわけで。
理事長は何故か学園長室にいらっしゃいました。
半裸で。
「失礼…しましたー」
学園長とにゃんにゃん…いえ、お噂はかねがね…だったわけだけれども。
ドアを叩いて『はい』だなんていうから、普通に開けたら、それだった。
それは開けた瞬間にお邪魔しましたにもなってしまう。
俺が閉じたあと、そっとドアノブをもったままの俺の手に手を重ね、再びドアをあけたリオラ先輩は、そんな真っ最中も気にせず報告を始めた。
後ろで呆れたり、真っ赤になったり、青ざめたりとレントが忙しそうだけど、気にしては負けだ。
もちろん隣で、ちょっと羨ましそうな気配を漂わせるヒースも、絶対に気にしてはいけないんだ。
意識した途端、こう、態度ってちがって見えるのどうしてなんだろう…。