暴れたら落とされるかもという恐怖と緊張の連続のあと、俺はぼとっと、落とされても大丈夫そうな位置から何かの巣とおぼしき場所に落とされた。巣っぽいものに落とされたということは、これから俺は俺を連れてきた何かの子供の餌になる可能性が高い。
実習ということで下げていた剣…は…悲しいことに最初の段階で抜け落ちてしまったらしい。今度から剣を落ちないようにするための何かがついている鞘にしようと、心に決める。
あと俺が出来ることと言ったら、耐えきれるかどうかわからないけれどセッカをここに呼び出す。という方法がある。
セッカの重みに耐えられなければアウトだ。
もちろん小さい時は小さいなりの重さなのだが、小さいサイズのときはやれることも限られる。
しかしそれにしても、俺の見る限り何かの子供らしい影はない。
卵もないし。
もしかして非常食なのかもしれない。
これは逃げれるかも。とも思うのだが、明らかに地上から何メートルあるかわからない高い位置にこの巣がある。
俺がいたはずの山が見えるのだが、学園から見える位置にある時計塔があんなにも近く…というか、隣に隣接しているような気がする。
これは、まずい。
よく考えなくとも、時計塔の近くにある巣っぽいもの…というか、巣を我が家にしている生き物はたったの一羽だ。
この巣にいる鳥は気がついたら誰かにテイムされて変わっているのだが、最近ここを住処にし始めたのは青い羽に青いボディ。肉食系の…はやぶさみたいなでかい鳥。青いから明らかにはやぶさじゃないけど、飛ぶ速度とか落下速度とか異常。まさに、肉食系の素早さ。
俺を食べるために地面から拾い上げてきたにちがいない。
どうやら俺がいたあたりはその鳥の狩場であるようだ。
「これは…うん…どうすれば」
ここに小さいセッカを呼んだら、俺の代わりに食べられてしまうかもしれない。
だって、小さいセッカはうさぎにしか見えない。
なんか装飾でごたごたしてるのより、やわらかそうで白くてほわほわしたもののほうが、美味しそうじゃないか。
じゃあ、セッカは呼び出せない。
ヒースは契約が特殊なので、呼びかけはできるけれど、呼び出すことはできない。
ここで俺がラッキーなのは現在地がはっきり分かっているということ。
そして、ヒースとは今そんなに離れた位置にはいないということ。
「…セッカに帰ってもらって、ヒースにここの位置を全力で知らせれば、生き残れる」
かもしれない。
どうも、呼びかけというのは感覚でなんとなく『こっちから呼ばれてる気がする!』というものでしかないらしく、たまに鈍感なやつは気のせいにしてくれるらしい。
それでも俺は全力で呼びかけなるものを心で念じてみたのであるが。…この呼びかけは呼びかけている方も非常に曖昧なもので、『呼んでみたけど大丈夫かなー伝わってるかなー』という感じが強い。
正直、第六感が一瞬つながって『は!?虫の知らせ!』とやってきてくれるかもしれない。みたいな賭けなのだ。
一生懸命、それこそ呪うことができたんじゃないだろうかと思うくらい念じていると、時間はあっという間にすぎたのか、それとも鳥も非常食をすぐさま食べたかったのか、鳥がばっさばっさと俺のもとに…。
「う…俺は食べても美味くないし栄養にはなるかもしれないけど、ならない!」
『何を言っているのだ人間』
思いがけない声が頭に響いて、俺はでっかい鳥を見上げる。
『貴様がうまそうだから連れてきたわけではない。食えそうだから連れてきたのだ』
ちょっと、飢える獣がここにいるよ、マジ助けて!
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