ガルディオ先輩もそろそろ帰ってくるということで、ちょっと気分はウキウキでテイマーの寮に帰ってくると、寮の掲示板に人集ができていた。
「ミハイル先輩、これなんですか?」
ちょうどそこに居たミハイル先輩に声をかけると、ミハイル先輩はこちらに振り返って、いつもの笑顔で答えた。
「クソみたいな学校行事の掲示かな」
いい笑顔なのに、クソとかいわれた俺の気分は微妙である。
「そのクソみたいな学校行事っていうか、去年は自分のことでいっぱいいっぱいだった俺は学校行事まったく知らないんですけど」
「あ、そっか」
「しかも去年のこの時期まだここにいなかったので」
「うん、なるほど。じゃあ、知らないね」
うんうんと頷いたミハイル先輩は、先程クソとかいったとはとても思えない。誰もが何度か、聞き間違いと思うほど唐突にクソだとかそういった言葉をミハイル先輩は使う。
ガルディオ先輩の話によれば、リオラ先輩の口調が移ったものらしい。ミハイル先輩は結構外見を裏切らないおっとりした話し方をする人なのだが、リオラ先輩も外見を裏切らない、よくいえばワイルド、悪く言えば粗野な言葉を使う。
三年も一緒にいたら、それは移りもするだろう。
「うーん…そうだね…テイマー、シーラー、サモナーのピクニック、かな」
「ピクニック…」
そんなニコニコ愉快そうな、お弁当楽しみだなぁ!的な行事がこの学校にあることが俺には信じられない。思わず人をかき分けなんとか掲示板が見える位置に向かう。
そこには、こうあった。
「三科合同、遠征?」
掲示板の下には寮生全員には行き届きそうにない量の紙がぶら下げてあった。俺はさらに人をかき分け、その紙をちぎって人ごみから離れ、ミハイル先輩の元に戻る。
「友好を深めよう…あ、うん…ピクニックですね」
「でしょう?理事長と学園長がほら、あの通りだから…こういう行事で燃え上がればいいんじゃないかなって」
「男ばっかりじゃないですか」
「はは…そうだね。でも、サモナーは女の子ばっかりだよ?」
知ってた?って言った先輩に、俺は、もう一度紙切れをみる。
三科合同遠征、もといピクニック。
ちょっと楽しみになってきたぞ。
単純だとは思うけど、久しぶりに同年代の女の子だから、いや本当に。サモナーが女の子ばっかりである理由は知らないけれど、そういうものなんじゃないかと勝手に思い込む。女の子が好きな職業だとか教科だとか、そういうので自然と分かれることもあるし。
「俄然、燃えてきた」
「意外と単純だね…」
年頃の異性に反応しない思春期がどこにいますか?いや、もちろん、性癖が違えば反応しないだろうけど。
この時、先輩がクソだといった意味を俺は理解してなかった。
「ところで、ヒースくんはどうしたの?」
「あ、自室の椅子に縛り付けてきました」
「…怒ってなかった?」
「ちょっと恍惚としてました…帰りたくないなぁ…」
本当に、正直に、帰りたくないという気持ちと、女の子に反応しすぎてて、俺はミハイル先輩の様子もガルディオ先輩のことも頭になかった。
それだけ女の子は威力がある魅力的なものだったし、それだけヒースが恍惚としているのをどう対処していいかわからなかったのだ。
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