「いやぁ…セキヤくんがお山にはいっていったときはほんと、不安で不安でしかたなかったんだけど、よかったよかった。これも、ガルディくんのおかげかなぁ?」
動物王国の中心にいた人物が、でっかい毛の生えた…たぶん竜とか言われる生き物の足に座って笑っていた。
「たぶんな。ビビリはビビリだしなぁ」
動物王国の中で、ニヤニヤと笑って俺を馬鹿にした最終学年の先輩…リオラ先輩がその動物王国の中で目立って不吉な集団を作っていた。
蝙蝠と爬虫類を中心とする集団ってかんじだ。でっかい蛇の頭の上とかに肘付かないでください、怖いです。
俺がこの世界で通っている学校は変わっている。
この世界でも特殊なんだそうだ。
とにかく、その変わった学校には変わったといわれるなりのシステムがある。
それが、この先輩後輩一緒くたにしちゃってるシステムである。
各学年一人ずつ四人のグループをつくり、一学年下の生徒の世話を見るってのが主なもので、四人兄弟みたいなものだとガルディオ先輩は話していた。
俺たちを四人兄弟にするとこうだ。
末っ子は俺。三男はガルディオ先輩。次男は動物王国の主ミハイル先輩。長男が不吉集団をつくるリオラ先輩。
学園内でも濃いと言われる兄を持っている…といっていいらしい。
兄にあたる先輩は弟にあたる後輩を一人選ぶ。
俺はつまるところ、ガルディオ先輩に選ばれた。
断る権利はあったのだが、ガルディオ先輩が断らせてくれなかった。
長男の不吉集団使って脅されちゃったのだ。
リオラ先輩やミハイル先輩が動物園をつくっているのは、彼らが特別優秀であるから、という理由ではない。テイマーは動物園をつくるのが普通なのだ。ガルディオ先輩みたいに、三匹しかいないというのはごくごく珍しいパターンなのだそうだ。
かくいう俺は、雪花で一匹目。
「お、さすがガルディが選んだだけあるな。強いのつれてきたわ。ビビリの癖に」
「いや、間違ってはないですが、そろそろビビリやめてもらえませんか…」
「いや、お前は永遠のビビリだね。キルロイネに未だびびってるんじゃな」
キルロイネというのは先ほどからリオラ先輩が肘おきにしている大蛇…これより大きい蛇をリオラ先輩は動物王国に参入させているため、むしろ中蛇といっていいのだが、でかいものはでかい。とにかく、そんな蛇の名前だ。
テイマーが生き物をテイムするには、契約を行わなければならない。
契約を行うにはテイムする生き物に自分の名前を教え、そして、名前をつけなければならない。
拒否された場合はテイム失敗。
契約をかわしたあとも、契約を破棄してしまったら、仕事のお手伝いをしてくれなくなったりするらしい。
「まぁ、リオラ先輩のテイムなさる動物は大抵怖いですよ」
フォローしてくれるのはいつも、おっとり穏やかなミハイル先輩だ。
何故リオラ先輩の弟分になったか、わからないくらいできた人だ。
「そうかー?可愛いのに」
シャーっと舌をだして威嚇してくるキルロイネを大人しくさせてからいってください。
キルロイネは大変嫉妬深いお嬢さんだからね。とミハイル先輩はいっていた。
ちなみに、俺の世話をすべき先輩であるガルディオ先輩は、俺がテイムできたあと、補習に出かけている。
…二学年にもかかわらず、三匹しかテイムできていないというのは、補習の対照になってしまうらしい。
その三匹がどれも普通ならばテイムすることができない生き物でも。
「ガルディは補習とかいって、また、一匹もつれてこねぇんだろなぁ…」
とリオラ先輩が苦笑していた。
テイムすることは可能であるのだが、本人にやる気がなければその限りではない。ということだ。
「そうですね。あの三匹が特別みたいですし」
ミハイル先輩もなんだか心配そうにそう言った。
両人ともに、ガルディオ先輩を心配していた。俺も、ガルディオ先輩にむけられる視線だとか陰口だとか、いやだと思うし、心配だとおもってはいるんだけれど、本人は何処ふく風だし。
「先輩なんとかしないんでしょうか」
「しないだろうね。あの子は。…ふふ。心配そうにしているけど、僕らは君も、心配なんだよ?」
リオラ先輩は口にはださないけれどね。と笑うミハイル先輩。
濃い先輩がただが。
俺は、先輩方の下でいられること満足している。
概ね。というか、随分。