ご近所は町内会


「だからさーなんで、お前は俺と仲良くしてんのよ?違うでショー?ふつうに違うでショー?はぶられたくなかったら、俺と一緒は違うでショー」
「いや、ガルディオ先輩に選ばれてる時点ではぶられてるから」
飯を食いながら、友人の文句を聞く。
この学校には、テイマーのほかに、サモナー、シーラーがいる。
サモナーは生き物を召喚し、その力を使う。たまに、テイマーに頼まれて生き物を召喚することもあるので、テイマーとサモナーは仲がいい。
しかし、シーラーはこの学園では鼻つまみ者…というか、この世界ではシーラーは鼻つまみ者であるといってもいい。
シーラーは刺青みたいなものを身体のどこかにもち、それを行使して魔法みないなものをつかう…のがシーラーなんだそうで。
使っているところをみたことはないが、シーラーが嫌われる理由はそこにない。
シーラーは人の身体に触ることで、シールと呼ばれる刺青みたいなものを人に移すことができるらしい。
その、シールを移す際、非常にその…性的な興奮を覚えたり、薬物使用時のようになってしまったり、場合によっては痛みでショック死したりするらしい。
とにもかくにも、シールを移すという行為をすると、感覚が狂ってしまう。らしいのだ。
移している間だけだが、気持ちいいとかそういうのは尾をひくし、痛みとかは思い出したりもするようで。
シールが多ければ多いほど優秀なシーラーと言われたりするらしく、そんなことを繰り返しておかしくなってしまう人間も多いのだそうで。
常時そのようなことをしている人間が多いものだから、シーラーは鼻つまみというか、いっそこざっぱりといってしまえば、異常者の集団と思われているところがあるのだ。
俺も、最初は近寄りもしなかったのだけれども、ガルディオ先輩が俺の友人の先輩と仲がいいため、自然とこうなったというか。
シーラーはかなりいってしまっている連中も多いのだが、いたって普通な人も少なくない。
友人は、ちょっとアレなところもあるけど、いい奴だ。
「いや、まぁ…ガルディオ先輩…は、例外チューの例外だから…」
「そうかもしれないけど、それなら、俺も例外中の例外でいいじゃんか」
「いいじゃんかってだめじゃんか」
頭を抱える友人はじつに可愛いもんである。
兄弟関係にある四人のうち誰か一人が他のグループと仲がいい場合、殆どはよっぽどのことがない限り、ご近所づきあいが行われる。
リオラ先輩などは、友人の先輩にあたる人間の遠慮に対し、ごちゃごちゃいうと脳天ぶち抜くといって、槍を掲げたことで、その友人の先輩に恐れられている。あれは、本当にかわいそうだった。あのときほどミハイル先輩が天使に見えたときはなかった。
「ガルディオ先輩はなんだァーほら…シーラーに近い、から…」
ガルディオ先輩はシーラーではない。
シーラーに近いのはその態度というか有り様というか。
「いいじゃん別に、俺は更なる例外ってことで」
「セキヤの場合は、居直りっていうんだよー」
噂をすればなんとやら、ガルディオ先輩がそこには立っていた。
「居直らないとやってけませんでしょ、俺の場合」
なんというか、もう色んなものを飛び越えると、もう知らない。もうやってられない。まぁーいっかーの精神じゃないと!みたいになってくるものなのだ。
「そうかもしれないねぇ。あ。カイリィーおはよん」
そして、友人の兄貴分というか先輩のカイリ先輩もそこにいた。
カイリ先輩の名前は、海里(かいり)といって、この世界とは違う世界からやってきたらしい。つまるところ異世界人同士がこの世界で出会ったことになる。
カイリ先輩はこの世界が長いらしく、10歳くらいのときにここに来て以来それっきりだとか。
カイリ先輩の出身国は戦争真っ最中で、カイリ先輩は戦力として使われるために育てられていたとかで、前の世界の魔法を持っている。
「ああ」
挨拶に頷くだけで答えて、先輩はまだ眠そうに食堂の席についた。
友人のレントの隣座った先輩の向かい側で、俺の隣にガルディオ先輩は座った。
実は、ガルディオ先輩もこことは違う世界から来ている。
ガルディオ先輩の名前はガルディオ・エンデンス・クオルディス。長いので、本人はガルディオとしか名乗らない。
二人はあまり、自分の世界の話をしない。
ちなみに、レントはこの世界の人間である。
この学園には、確かに俺と同じように違う世界から来た人間が多かった。
けれど、俺と同じ世界からきた人間は少なく、その同じ世界からきた人間は、あまりお友達になりたいタイプじゃなかった。
「カイリ先輩もしかして、また、シール、人にあげましたんすか?」
「あー…ほしいっつうから、今日渡せる分は全部」
シーラーにも種類がある。
シールを行使する人間と、シールを貯め渡す人間。
カイリ先輩は渡すことを主としているが、きっと、シールを行使することもできるのだとおもう。レントはカイリ先輩が人にシールを与えると非常に嫌がるからだ。
「なんであげちゃうんすか!先輩はもっとっすねぇ!」
その様子を眺めるガルディオ先輩はニコニコと楽しそうだが、俺も先輩に聞きたいことがある。
「先輩補習は」
「落第点だってー」
失礼しちゃう。といった先輩に頷くように、白と黒の獣が現れる。
先輩は三匹の獣をテイムしているが、出てくるのは主にこの二匹だ。
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