『まったくだよ、あの教師。主にむかってなんて口ききやがるの。もはやパワハラだね』
『笑止。アレは一度死なねば治らぬ病だ』
モノクロコンビは実に黒いことをいう。主人至上主義なのだ。
俺の頭の上に居座っている雪花も何かいったようで、白い獣…シロガネが鼻でわらった。獣なのに器用なことだ。
『おまえさんの…セッカとかいった?とにかく、あんたの主人もあの教師にはこけ脅されてたよ。未だテイムできぬとは、さすがガルディオ・エンデンス・クオルディスの後輩だとかさー結局、主にけちつけたいんだよねあのボンクラ』
シロガネの言葉に、セッカさんはご立腹のようで、頭上が何か激しい。
ちょっと、頭上で暴れるのはやめてください!
「主人思いだねぇ。いい子ひっかけたねぇ」
「ひっかけたとか、ナンパじゃないんだから!」
俺はセッカが肉食か草食かだけでも相当ビビッたのに!
ちなみに、結果からいうと雑食のようです。
なんでもたべる…ちょっと恐ろしい。
いや、俺も雑食だけど。
「俺もねーシロガネとハガネがいなけりゃねー…そりゃあ、他の子たち手当たり次第だったんだけどー。極上の美人さんたち捕まえちゃったからねー」
とシロガネとハガネを撫でる先輩こそ、まるで動物の…猫のようだ。
「ハイロは?」
「あの子はだって、シロガネとハガネの愛の結晶じゃん」
と先輩は言うけれど、シロガネとハガネは両方ともオスだ。残念なことにオスだ。
けれど、間違いなくシロガネとハガネの子供といえた。
ブラックなことに、シロガネ、ハガネは研究室生まれ、研究室育ち。そして、その二人の遺伝子をちょいちょいっと弄って生まれたのがハイロらしい。
その上三匹とも、この世界とは違う世界から…ガルディオ先輩がそのまま連れてきたらしい。だから、本来なら、テイムなんてしようがなかったのだが。
先輩がどうしてもどうしても連れ歩きたくて無理矢理暴れてそれこそ、ちょいちょいっと攫ってきたらしい。
先輩、それ、犯罪です。
とかいったところで、そこも合法な施設ではないとかで、なんともグレーなかんじである。
そんなことを言っている間にも、カイリ先輩はレントに叱られていた。
カイリ先輩は俺の世界でいうところの硬派でかっこいいけど、怖い印象が拭えない感じの人だ。実際のところ、ボーっとしていることも多く、大概眠くて不機嫌そうな顔をしているだけで、大人しいというか。とにかく悪い人じゃない。
「レントくんその辺にしてやってくれないかなー。カイリまた眠そうだよー」
「いやっす!先輩にはもっとガツンと言ってやりたいっす!」
「あは。でもねーレントくん、あのねぇ…」
そういって、そっとガルディオ先輩はレントの耳元まで顔を寄せると小さく何事かを話した。
レントは一瞬にして顔を赤面させて。
「すません…やぶへびで…」
なんていった。
何いったんだよ、ガルディオ先輩。そんなだから、シーラーに近いとかいわれちゃうんだぞ。からかうにしても下ネタやめてあげてくれよ。レント弱いんだから。と思いながらも、俺はあえて言わない。
レントの赤面かわいいもんなー。
「やぶ…ガーディー。お前とは一ヶ月は何もしてない」
一ヶ月前には何かしちゃったんですか。というか、おまえとはってあたりもつっこみたい。
レントは更に真っ赤になった。
いや、お気の毒様。
「だーって、カイリ。シール移す係がいいんでしょ?味方してあげたんだよ?感謝しなよー?」
「感謝しなよじゃねぇよ…そんなに不満か、一ヶ月放置が」
「不満不満当たり前じゃん。なんで俺放置してんの?そういうプレイ?」
これで付き合っていないというのだから、不思議というもので。
明らかにガルディオ先輩はカイリ先輩がすきであるし、カイリ先輩もまんざらじゃない感じなのに、何故付き合わない。
真っ赤になったレントは身の置き場に困っている。
かわいそうでかわいい。
「じゃあ、今夜こいよ」
「合点だ。というわけで、今日はテイムの寮に帰りませんよと先輩方に伝えといてね、セキヤくん」
「わかりましたー」
『やったね、主!カイリをそのまま手篭めにしちまえヒューヒュー』
『ひゅーひゅー』
人格?獣格?崩壊するくらいハガネとシロガネが主人とカイリ先輩の様子に乗り気だ。
いつものことなので、ほおっておきたいが、ハガネとシロガネのシッポが、パタ。パタ。と嬉しそうに地面を叩くので、非常に可愛らしい。
レントには申し訳ないがもっとやってくれても構わないと思う。
「ほらほら、うちの灰色コンビも乗り気じゃん」
「…おまえはいつまでソレを引っ張るつもりだ」
「いいじゃんいいじゃん。だって、可愛かったんだもん。ずっとひっぱるね、俺は」
なんのことかは解らないが、先輩以外の人間はハガネとシロガネをモノクロコンビと呼ぶので、解りやすい理由からそういっているのではないと思う。
それよりレントが死にそうだ。
助けよう。