人々は身を寄せ合って暮らしている…と言うわけではなく、この屋敷の主人に仕えているらしいということがわかった。
カイリ先輩とガルディオ先輩があの手この手を駆使して舌先三寸というか、口八丁手八丁というかで住人に聞いた話だ。
その主人というのに会えないかと相談すると、しばらくお待ちくださいって…また待つのか…と皆して待ちの姿勢に飽き飽きしていると、屋敷の主人は空からやってきた。
羽の生えた猫がいるんだ。羽の生えた人間がいたっておかしくない。
もしかしたら悪魔ってやつも…まぁ、そんなのは居ないってのはさすがにしっているんだけれども。
「先輩、羽の生えた人間ってのは存在するんですかね…」
「んー俺は出会ったことないけど。ここは、出身者に聞くのがはやいよね」
レントを見ると、レントは唖然とした顔でその羽つき人間を見ていた。
どうやら土着の生物ではないらしい。
「先輩、居ないみたいです」
「あー…面倒くさいねぇ。これ、人化とかそういうアレなのかなぁ…俺のとこにはない魔法なんだけど、どこだったかの世界の魔法にそんなのが…ていうか、魔法自体俺にとってはかなり御伽噺というか…」
先輩、俺からしたら先輩の言うところの召喚術もただの魔法です。
そいつは羽をどこかにしまうと俺たちの前にやってきて、皮肉に顔を歪める。
「今更、何か用か人間」
「うっわ、性格悪そ」
レントが正直な感想を述べた。
俺もちょっと思ったけど、口には出さなかったのに。
そいつはそれに対して何も言わないで、俺とレントの前にいるガルディオ先輩とカイリ先輩を見る。
そうか、やっぱり代表に見えるかその二人が。
「そうだねぇ…んー…この状態の原因究明っていいたいけど、さすがにわかりやすい。セキヤくん、これがここのでたらめな黒い世界の原因にされてる、門に繋げられたかわいそうな被害者だよ」
ガルディオ先輩が俺に振り返って、そういってくれた。
「…大きな召喚獣に見えないんですけど」
どう見ても人間サイズだ。
平均的な人間よりは背が高いし、美形といわれる類の顔をしているが、人間のサイズを凌駕しない。
どう見てもセッカの元の姿の方が大きい。
「人化魔法とかいうのつかってるんだったら、元は大きいのかもしれないよ?でもねぇ…もしかしたらこのままのサイズなのかも。噂ってあくまで噂だしねぇ…」
なんだか無視されてだんだん不機嫌になっていくわかりやすいそいつを見て、ちょっと哀れに思いながら、ガルディオ先輩のいうことを聞く。
タイミングを見計らったのか、まわりの反応をなんとも思っていないのか、それとも何かを考えていたのか。
カイリ先輩は真面目な顔をしてそいつに答えた。
「ここから出たい。元の世界に帰りたいと思っていないか?」
そいつはカイリ先輩の言葉に目を見開く。
「かえ…れる…のか…?」
「もしかしたら、だが」
そいつが元の場所に帰ることができたら、俺はテイムなんてしなくて済むし、これの原因が大型獣のせいってことじゃなくて、ガルディオ先輩のいう空間軸がどうのということのせいかもしれないと見直してくれるというか…あちらからすると藁にも縋る状態になってくれるのかもしれない。
それはいい提案だなぁ…なんて、他人事のつもりになっていると、急に話はこちらにやってきた。
「ただし、手段が気まぐれでいつになるか解らないひどい仕組みだ。その間、安全を得るために、そこにいる奴と契約してくれないか?」
「…カイリ先輩、なんか詐欺師みたいなこと言ってません?てか、なんか、え?」
そいつは俺を見て微妙な顔をした。
「俺に、コイツの下僕になれって?」
「この世界では友達、程度の解釈だが」
さっきからカイリ先輩はこの世界だとか元の世界だとか言っているけれど、もしかしてそいつも違う世界の人だというのだろうか。
充分ありえる。異世界から人間がくるというのなら、人間じゃないのが来たっておかしくはない。おかしくはないけれど。
「カイリ、カイリ」
「なんだ?」
ガルディオ先輩に呼ばれ、そいつからガルディオ先輩に向いたカイリ先輩は首を捻る。
「そこの召喚されたのは…この世界じゃないやつ?」
「たぶんな。…レントの反応からして、この世界には居ない生き物だ。その上、お前の話を聞く限り、人になる魔法というのは異世界の魔法だ。つまり、異世界からきたんだろう。人がこれて、それ以外がこれない道理はない。しかも、色々な世界からここに集めてるんだ。可能性としては高いと思って、言ってみたんだが。そうなんだろう?ここじゃない世界からきた、だろ?」
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