とおいにもほどがある


俺の連れて来られた世界は、ほかの世界からしたら新しいらしい。
界渡りの能力者とか言われているのはもともとこの世界にいる住人というか、はじめに現れた生き物らしい。
この世界はだいたいその生き物によってできてきた。
最初はさみしいな。程度で人間を次から次へとさらってきてはこの世界に置いたらしい。
もといた世界にしがらみが少なく、もといた世界に絶望している子供ばかりを。
その子孫がこの世界の出身者。大元を正せば、別の世界の住人ばかりってわけだ。
そのうち人間も増えてきた。
せっかくだから他の世界みたいに動物もいたらいいんじゃないかな。って思い込みで、せっせと動物を増やした。
これもせっせと誘拐して、だ。
そうすると、人間より順応が早い動物たちが進化して、今のような形になっていくわけだ。
進化したにしてももともとは違う世界の生き物だ。
気がついたら、世界の違いとか、今までとの違いとかあって、色んな生き物が争い始めた。
このままでは大変だ。
というわけで、動物たちと意思疎通するものが必要になった。
そして、テイマーが連れて来られた。
このテイマー、もちろん最初と同じように子供を誘拐してきたわけだが、子供が他人に教えられるほど素晴らしい使い手でなければ、この世界ではただの爪弾き者。その上一人じゃ、迫害の対象になってしまう。
というわけで、神童たちや、天才とよばれている人間をたくさん…といっても、異界に影響が出ない程度に、理由付けして、いいタイミングでつれてきたわけだ。
たとえば、死にそうになっているところを助けて、だとか。
そんなこんなで、色々あって、サモナーやシーラーも連れて来られた。
シーラーに至っては、たくさん連れてきても爪弾き者になってしまったわけだが。
で、だ。
そんな誘拐によってできた世界は、それでも新しかった。
どんどんこの世界に魔法や生き物たちは順応していって、いい感じになってきたけれど。界渡りの能力者は今更ひどい勘違いを始めた。
俺達、神様、どエライ。
とかそんなところの勘違い。
その神様説を強くするためにはなにかしら伝説とか、神様の意志を伝える人間ってのはいなけりゃいけない。
その頃になると、一人連れてきたところで思惑がうまくいくとは限らないことに気がついてた界渡りの能力者たちは、まぁ、とりあえず数撃ちゃいいかって、それなりに計画たてて、翼を持った猫たちを、俺たちに会わせる。
最初の思い込みって強いでしょ?あの猫たちに、『意味がある』とか『目的は自分で作ったらいいんだよ』なんて言わせたりしとけば、ほら、思惑に沿ってくれる可能性が強くなる。
そのまま放置してもよかったんだけど、世界はそんなに温かくない。放置しちゃうとうまくいかなければ無駄死にさせちゃうかもってことで、俺たちはあの学校に放り込まれる。
何も一から百まで能力者たちが管理してるわけでもない。
気がつきゃ思惑バレバレ、ひっどいありさま。
でも、それでも、最初の刷り込みがあるわけで。
それにのっておけばとりあえずもとの世界には戻れるし、神様云々は置いといて、そうしとけばいいかなぁとなんとなく思わせる。だって、この世界きても何もすることないんだよ。
天才だとか神童だとか言われてる人たちは暇を弄んじゃう奴らも多くって、まぁ…最初だけ計画して放置な能力者たちは好きにさせちゃってるわけで。
で、今に至る。
「あの連中、一個失敗しても、いくつもいくつも成功するまで計画立てて連れてくるから。もといた連中まで巻き込んで。…で、今回はうちのビビリを中心にまきこんでるようだ」
なんか、それ聞いて、俺が周りに申し訳なくなってきたんですけど。
「ここまで天才ばっか連れてきてみたけど、天才なんて自分勝手な連中多いし、頭いいぶん、なんかあつかいずれーなってことで、ビビリくんみたいなのを実験的につれてきたわけだ。…ま、どの世界でも物語の伝説の勇者様は何も出来ない普通だったはずの少年なわけだしな。いい具合にそれが当てはまる素敵な少年だったわけだ」
「学園に放りこんでおけば、だいたい天才たちがサポートしてくれるしね。異世界の勇者が異世界の人たちを連れて素敵な冒険譚を作ってくれるわけだ。この冒険譚をまとめるのは…さしずめ後輩君かな?すごく信頼を得てるけど、あれは刷り込みだねぇ…異世界の人ってほとんどこちらの世界じゃ、天才しかいないから各分野でスーパースターなんだよ。もともとこっちの世界の住人だった後輩君は夢にでも天啓とやらを受けてたんでしょ」
ここまでの説明は、うちのリオラ先輩とガルディオ先輩がすごーく簡単にお気軽にお送りしました…っていっても、ガルディオ先輩は、リオラ先輩と交互にしていて、途中で現状把握したらしい。
「で、今回の俺は勇者のために馬車馬のごとく働く勇者ご一行の一人。途中で死んじゃうかもしれないけど、そこは尊い犠牲とかって伝説の中でキラキラしちゃうんだろうねぇ」
「その上、このストーリーのひどいところは裏切り、だな。俺とヒースの世界が一緒なのは分かってるよな?」
「え、あ、はい。ききました」
先ほどから難しい顔して真剣に考えてるヒースをちらっと見て、俺はリオラ先輩に向き直る。
「俺は、そこなヒースのいる世界では魔王といわれる種類の王様だったわけだが」
「はいって、え?」
「俺が魔王様になったあとで、こっちの世界きちゃったから、またあっちじゃ、たぶん派閥争いがおこったこったろうよ。俺が大方終わらせたあとだから、有力なのはいないから、たぶんしょっぼい争いが」
「あ、いや、魔王?」
「おー。俺も実をいうと、人間じゃないんだわ」
すごいこと聞いちゃったよ。
しかもなにげにヒースをすごくけなしてないか。
しかも、散々悪魔だの魔王だの学園で言われて気にした様子でなかったのも、それが普通であったからなのか、リオラ先輩。
妙に納得、魔王リオラ先輩。
「で、だ。魔王なのは今更どうでもいい事実だ。裏切りだ。魔王なんてなんで連れてきたかっつったら、わかり易い悪役がほしかったわけだ。俺をこの世界に投げ込んでみた…けど、俺は何もしないどころかこの世界の事情に詳しくなてしまった。じゃあ、第二号ってことでなんの情報も与えられない場所にヒースを投げ込む。でも、何も起こらない。これはまずったなって、とりあえずヒースがいることを問題とし始めたサモナーの国の住人といっしょに勇者をつれてきた。この勇者が傑作で、魔王様の後輩になっちゃった。さて、この魔王様、実はサモナーの国を助けるために連れてきた異世界人の一人の先輩だ。これは面白いことになってきた。いい感じになれば、俺は最後のボス。味方からの裏切り。悲劇のヒーロー感動の最後。異世界に帰って、好きなように盛り放題盛って、サモナーの世界を救ってもらえた王子様が語り継いでくれるわけだ」
「やだやだ、お素敵ー!俺、すっごい使い捨てー」
もうすでにこの世界の仕組みに順応しているガルディオ先輩がちゃちゃを入れてくれるのと、リオラ先輩の言い方がアレなため、イマイチ真剣になれないんだけど。
大変お先真っ暗なことを言わた気がしてならない。
「俺、リオラ先輩に勝てる気がしない…!」
「そこかァーそこなのかぁー…やっぱ、セキヤってあれだよな、りっぱなあのテイマー家族だヨ…」
レントが呆れたように呟いた。
現地の人だから、そういった事情は知らないもんかなぁとおもってたんだけど、カイリ先輩がいるんだから、そうでもないらしい。
それに、異世界の人間もかなり多いし、結構曖昧ながら知ってるものらしい。
ここまではっきりしたのはあまり聞かないけどってあとで説明してくれた。
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