アレとの出会いはアレからの告白からだった。
「つきあってくんねぇ?」
好きだから付き合うではなく、その処女耳に穴あけてぇからという理由だったのだが、それは告白だった。
告白だと思いたい。
当時から性的にやらしく雄臭いアレは、俺の下半身直下の顔と声と…態度で俺に告白をしてきた。
俺はその時すでに会長で、外部入学者のアレとは接触が少なく、風紀が躍起になって追い掛けているセクハラ野郎だとしか認識していなかった。
だから、アレの雄フェロモンに何の抵抗もできず、告白されて、俺はうなずくしかすべを持っていなかった。
セクハラ野郎は、セクシャルハラスメントではなくセクシャルキラーというか。
どんな壁も一瞬で飛び越え、思わず足を開き、どうぞ!としたくなる色気を放っていたのだ。
「わかった、付き合う」
二人して欲望に負けたといっていい。
俺とアレ…梓桜の付き合いはそうして欲望から始まった。
欲望から始まったが、二人してお付き合いは慎重に慎重を重ねた。
ピアッシングを二つや三つや四つで終わらせたくなかった梓桜は慎重に俺をものにすることを優先し、俺は俺で、ヤってくださいだなどと言ったこともないし、言う予定もなかったし、これは何かの勘違いではという気持ちもあって、様子見をしたりもした。勘違いでないと気が付いた後も、誘うにしても一夜限りで終わらせられる色香ではない。セフレになるにはどういった態度をとるか…いや、いっそのこと、奴を落とせばと、奇しくも二人しての落とし合い。ある意味両想いな俺と梓桜。
気が付けば梓桜が先に落とされてくれた。
俺は念願どおり梓桜とヤって、ヤって…梓桜の身体に夢中だった。梓桜に開発されたというのもおこがましいくらい梓桜に迫って、毎晩毎晩、たまに起き上がれないくらい。
そんなに梓桜の身体に夢中になった俺が簡単にコロッと梓桜に気持ちを持っていかれてしまうのも当然のこと。
梓桜は俺を好いていてくれたのだから、俺を落とすことに手を抜いたりなんてしなかった。
あえなく、俺は梓桜に処女耳を打ち抜かれる。
最初っから右耳たぶにひとつ、左の軟骨に一つだなんて具合で。
俺の名前は最初会長、途中から淫乱もしくは会長。いまにいたっては、おいだのおまえだのあんただのてめぇだの。
俺の名前を梓桜はいわない。梓桜が照れ屋なわけじゃない。
梓桜はどこかの転校生より俺の名前を特別視していて、やってるときすら名前をよんでくれない。
だから、名字だってたかが一週間呼んでくれるというだけで、俺は簡単に舞い上がれるし、その他の条件なくたってゲージくらい広げる。
名前を一生呼んでくれるなら、一生俺の身体にあけ放題してくれたってかまわない。
「は…久しぶり、だから…」
最初からして身体目当てなわけだから、どうしてもこういったことに火が点くと我慢できない。
久しぶりだからといいながら、腕は梓桜を逃さないようにしっかりその身体をとらえる。
「…がっつくなよ」
普通、受け身な人間に言うような言葉ではないが、俺には当てはまる。
もっともっとと求めすぎてしまうため、次の日が休みでないとあまり求められないのが残念である。
そんな肉体重視な俺と梓桜なわけだが、心だってそれはもう二人して重たい独占欲が働いている。
それの最たるものが俺の梓桜を着飾るという行為だ。
梓桜は、雄臭い色気を自由自在に出すだけではなく、それを利用しており、わざと自分自身がフェロモンを利用しやすい格好をする。
雄フェロモンにあてられ、梓桜に腰をたたなくさせるだけなら未だしも、もう勃起すんのは仕方ないとして、おかずにするなど腹立たしい。
梓桜は俺のだ。俺だけがフェロモンにあてられ、俺だけがおかずにして、俺だけがかまわれておけばいい。
それなのに、雄フェロモンだだもれにする梓桜。
俺の嫉妬を煽りたいのか、単純にそれを利用するのに慣れているのか。
とにかく、俺は梓桜をいかに格好よく、そのフェロモンを抑えるかに終始する。
恋人を人目につかないようにするならダサくしておけば良いではないかと思われるが、俺だって梓桜を自慢したい。こんなかっこいいやつが俺の、俺だけのものだと主張したいのだ。
俺の名前をいちいち持たせるのはその主張の一つでもある。
これだけきくと俺だけが梓桜にこだわっているようだが、梓桜もそうとうだ。
まず、俺にしかピアスをあけなくなった。…これは満足してしまったせいもあるのだが、本人いわく俺にしかあけたくないのだそうだ。
そのピアスホールに通すピアスはかならずあいつの身につけていたものだ。
もちろん消毒は念入りにされるが、かならず梓桜のお下がりなのだ。
それをすることにより、自分自身のものだというペッティングをしているのだろう。俺は梓桜が身につけていたものを身に付けられて大変満足なわけだが。
そのペッティング…ピアス以外、舐めたり噛んだり跡のこしたりってのも実に巧妙でしつこい。
俺は梓桜を自慢し、他の目から遠ざける行為に力をいれるが、梓桜は俺を梓桜のものであると証明することと、梓桜から離れないようにすることに力をいれる。
梓桜は俺を心身共に溺れさせ…いつも嫉妬させる。
「あずさ…」
抱きついて、キスみても、噛み付いてみても。
気が付けば俺がドロドロである。
「キスはもういいのか?」
俺の好きにさせてくれていて、俺一人ぼんやりしてしまう。
「梓桜は…余裕なくなったりしねぇの…?」
「さぁ…どうだろうな」
ああ、今日も梓桜は最高にかっこよくてエロい。