生徒会長の彼方宗正を初めて見たのは、入学式でのことだった。
そう、誰もが見上げるステージの上、会長がご立派に挨拶をしていた。
まだ生徒会長となっていないあいつの耳を眺めながら、ニードルさしてぇなと思ったことを覚えている。
まだまっさらな形のいい処女耳が、少し赤くなっていたのは、まだ春先で寒い講堂が暖房で無用に暖かかったせいだろうか、それとも緊張のせいだろうか、よくわからない。
ただ、その耳にニードルをさしたかった。
俺のファーストピアスは、自分で、安ピンであけた。
きれいにあけたとはいいがたいピアスホールだったが、膿むこともなく定着したのだから、まぁまぁのできだったのだろう。
それからというもの、俺は自分の耳にも他人の耳にもさんざんあけてきた。
だが、他人に開けたいと思ったのは、初めてのことだ。
俺の友人たちは俺が何をしなくとも、何をいわずとも、ピアスを開けるのがうまいということを知っているから、開けてくれという。
しかし、どうだ。
生徒会長はそんなこと知るはずもない。
まして、入学式が終わるや否やはじまった生徒会役員任命式で生徒会長になってしまった人間が、俺のことを知っているはずもない。
ピアスを開けるというのは、簡単にいうと傷を付ける行為だ。
いつかただの穴になってしまうのだが、貫通するまで棒状の何かを通さなければならないのだ。
それに怖いと感じるのは人間として当たり前だ。
だから、突然会長にピアスを開けさせてくれと頼んでも、無理な話だろう。
せめて、俺のことを知ってもらえれば、ちょっとくらいはそういう話をしても大丈夫なのではないか。
そう思ったから、俺は昔から便利に使っている自分自身の魅力とやらを使ったのだ。
色気がある。
一言で俺の魅力は表せられる。
それだけが、俺の目立った魅力だ。
双子の弟にいわせると、迷惑きわまりなく、面倒くさいことこの上ない魅力だ。
この色気でちょっとばかり有名にでもなれば、生徒会長も俺のことを知るだろう。
そう思い、俺はしばらくの間、色気全開でふらふら遊び回っていた……正しくは、騒いでる奴らががんばって足を閉じているのをみて笑っていたといっていい。
そうやって遊び回ったが、やはり雲の上の存在というのは、下々の連中のお遊びなど見ていないし聞いていないものだ。
どうも知名度があがって、弟が会長に俺の話題をだしても、食いつきが悪いという話をきいて、俺は考えた。
俺の魅力とやらは、会長にも有効なのだろうか、と。
答えは、有効だったわけだが。
「梓桜」
毎朝毎朝飽きることなく俺のコーディネイトをするあいつは、今朝も、俺が着替え終わるとうっとりと目を細める。
「今日も梓桜は最高にいい男だな」
本物のいい男が目の前で嬉しそうに笑う姿は、他人から見ればさぞ、男前に見えただろう。
俺からみたら可愛いだけだ。
「おい」
「あ?」
俺が手招きすると、あいつは簡単に俺の近くに寄る。
俺はあいつの唇をなめたあと、口の端にキスをする。
「……たりねぇ」
言わせたくて、わざとそうした。
俺は、笑って、もう一度キスをする。
どうせ、キスをすれば、もっとと言われるのだが、あの、満ち足りない様子が好きなので、どうしても言わせてしまうのだ。