閑話休題


セフレが増えたからといって、嬉しくなってお祝いするほどのことはないし、わざわざ溜まり場で自慢することもない。
もちろん、報告されることもない。
ただし。
相手が同じクラスの河上朔也(かわかみさくや)だということは非常に嫌な展開ではあった。
いつものパターンなら、ヤリ捨て。
気に入ったとしても、長いか短いかの違い。 それが、両方とも本人の意思ならば仕方ないというだろうが、今の河上の態度からしてビビってセフレになることを頷いてしまったに違いない。
どうしてこんなことになったか、聞きたかった。
そう、俺は聞きたかっただけだった。
あと、出来れば説得して何とかしたかった。
結果が、誰が差し入れたのか、それなりにのめるけれど、酒量を間違えて酔っ払ったアキラがいきなり河上を怒鳴りつけて呼び出した挙句、かなり呑ませてベッドイン。
止めようとした。
止めようとしたんだが、そこまでアキラがのんでいるとなると、他の連中もそうとう呑んでいて、のめや歌えやの大騒ぎだったわけで。
騒ぎにまぎれて、二人はいなくなった。
典型的なお持ち帰りパターン。
河上、すまん。
そう思いながら、俺は別の人に電話をする。 コールはきっかり5コール目。
深夜にかけた電話に、海外ドラマが今いいところだと不機嫌そうな声を出す。
「脱獄するやつですか?二十四時間のやつですか?」
きいた俺に、脱獄するやつ。と不機嫌ながらも答えてくれる。
「レンタルですよね?」
見る?と不機嫌ながらも尋ねてくれる。
「ああ、その前にすみません、河上お持ち帰りされました」
知っているという答え。ああ、そこで一緒に見てたのか。
「意外と厳しいですよね。男なら、自分で断れっていうことでしょう?」
そっけなく、そう。と返ってくる。内心面白くないと思っているのは確か。
そのうち、ケツの穴の一つや二つがたがた言うなとか言いそうな人ではあるけれど、河上のことは可愛がっていると言っていいくらいの構いようだった。
「つまらないなら早く邪魔すればよかったのに。あいつ、ヤリ捨て常習ですよ」
ため息が受話器越しに聞こえる。
あれだけのましたのなら、強姦といえないほど正体をなくして気がついたら朝なんてこともありえる。
「…とりあえず、そっちへいきますね。今日はずっと見るんですか?」
間もなく、普段は言いそうもない言葉が受話器越しから漏れた。
俺が好きなのは、そういうところです。




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