男なら、一度は憧れるもんでしょ、所謂、悪ってやつに。
なんか、マンガとかドラマとか見ちゃうもんでしょ。
自分が巻き込まれるのは嫌だけど、強いってことに憧れるじゃん。
それが単純に力だったり、格闘家だったり、いかにもカリスマにかかれてるマンガの不良だったり。
まぁ、実物は怖いですよねー。パネェ怖いですよねー。
喧嘩するときでさえ、殴る前に口で喧嘩してとりあえずものにあたって、それでも納まらない感じなら、手が出たって状態になりますよね。
なかなか、殴り合いとか、そうそうお目にかからない……はずだったんだけど。
気が付いたら、殴り合い蹴り合いの真っ只中、部屋の片隅の物陰でガタガタしてます。
仕方なくねぇ?
俺のなかで不良がクラスメイトってだけでも、ビビって今にもペチャンコになりそうだったのに、すげーミラクルが起こって、不良の、しかもこの辺じゃ敵なし的な人のセフレにされちゃって、なんだかんだ馴染んできちゃっただなんて順応力たっけぇな!な俺だけども!
それでも、コレはむりだろおおおおおお!!!
なんなの、これ、怖い痛い!
他のやつらがどうなってるか心配とか、そんなのできません!俺チキンだもん。自分が正直かわいいもん。
後で罵られようと、男の沽券に関わろうとも、なんかもう全力で逃げ出したいけど、ほとんど腰抜けというか!立ち上がることも難しいです!!
なんかもう、音聞くのも怖くて、耳ふさいで、ガタガタしてたんだけど、急に。本当、急に腰の辺りがぶるぶるしだしたのね。
おお、マナーモードな俺、グッジョブ。
しかし長いなー。でもどうしようかなーとか呑気なことを思ってないと俺はもう泣いちゃうと思う。
とにかく長いんで現実逃避に携帯出して、ディスプレイを見たら、心友でした。
相変わらず、空気よめないよ。
でも、俺も何を思ったか、電話とっちゃったんだよねー。
後で考えても何がどうなってそういう心理に至ったのか解らない。
「…は、い」
受話器越しから聞こえてくる、雄成の声。
昨日もあったのに懐かしくなる。泣きたくなる。呑気にレンタルビデオの話をしている。
おう、今度は24時間のやつかりるって話してたもんな。
俺さ、たぶん、憶えてたんだと思う。
心友が、まもってくれるっていってたの。
俺さーおもわず、たすけてーっていっちゃったのね。もう、泣きながら、小さい声で。
すぐに、電話が切れた。
あれ、雄成さん、なんかひどくない?
おもいつつ、現実逃避が出来なくなって、やっぱり隅でがたがたしてた。
よく、見つからなかったと思う。
いつぐらいだったか、この喧嘩騒ぎの中でもはっきりと聞こえるバイクの縛騒音が聞こえて、溜まり場に突っ込んできたんだ、と思う。
俺は怖くてその現場も見れなかった。
なんか、よりいっそう激しいなんかもう、グロイ音がしたような気がして、耳を強く塞いでいた。俺はもう、鼻水ズーズーすすってて、心友が『なんや、その顔、きったないなぁ』といって颯爽と、現れるまで生きた心地がしなかった。
なんかもう、片手に、この辺最強の不良といわれるアイツが吊るし上げ状態でつれてきたのはきっと気のせい。
しかも、めがね外してて、なんと言うか目は悪くなかったんですね。というか、颯爽と現れたワリには非常に恐ろしい笑みがはりついてるとか、実は意外ともてたりするんじゃないですか的な外見だったとか、そんなことは!些細なもんだいだ、たぶん!!
もう、きてくれたことに、俺の鼻水全開。
もう、すすっても垂れてきます!液状!
「…助けんかったらよかったかな」
そ、そんなこといわず!!