どん底瓶底セパレイト


昼休みになるやいなや伸ばされる手は、俺が振りほどけないほど強い力で、俺の腕を掴んでないけど。
弱々しく感じる手。
本当はもっと強く出られる人だって、俺は知ってる。
だって、この前まで脅されて、強制されて傍にいたから知ってるんだ。
けどさー…どうして、こうも、違っちゃえるんだろなぁ。
難しいとかいいながら、俺、アレからずっと避けてる。
避けるの難しく無いかなぁ、と思ったんだけど、意外とそうでもないかも。
俺みたいなのをへタレ、とか世間ではいうらしいよ。
なんかね、顔を合わすのも、目が合うのも、恥ずかしいんだよね。
好きって自覚した瞬間から視線の意味って変わるもんだねぇ。前は怖くて避けてた。今は恥ずかしくて避けてる。
態度は変わらないけど、事後の様子は随分かわったんじゃないかなぁ。
赤く、なってる。たぶん。
でもねーそれを見せたら駄目だって、言われてるし、それが見えるのも恥ずかしいし。隠してる。すげー隠してる。
俺、そんなんばっかはうまいと思うよ。ふふん。自慢にならないけど。
まぁ、そんなこんなで避けてるんだけど。
昼休みはね、まだ、一緒してた。
た。…過去形。
本日、初めて、拒否してみました。
感想。…俺、悪い人みたいじゃん。以上。
だってね、悩みながら呼ぶんだよ。
悩みながら、呼ばれる声に、本当は振り向きたくて仕方ない。
抱き締めるほどの根性なんてないし、向かい合ったら怖くて笑うこともできないんじゃないかと思う。
でも今みたいに、避けることなんてさ、ないんだと思うよ。
なんか、ぎぎぎって壊れおもちゃみたいに振り向いて、引きつった笑み浮かべて、そんで、屋上につれてかれて。
昼飯なんか買ってねぇーし、持ってこねぇーしって、俺に無理難題押しつけて、俺は屋上から鼻水振りまきながらすすりながら、売店までダッシュ!
心友が更なる無理難題ふっかけて、俺は半泣きで屋上に戻る。
そんなんが、普通で、これからもそんなつもりで。
ここで意地とかはる必要あんのかな、プライドってここにいるのかな?
思いながらも、俺は腕を振る。手を振り払う。振り返らず、何もいわず、教室から逃げる。
追い掛けてなんかこないんだろなぁ。って思う。振り払った瞬間に小さく呟いたの聞こえちゃった。すげー、それが、苦しい。
嫌いじゃないし。
むしろ大好きだし。
伝えてないし、伝えようともしてない。隠して、避けて。
何も言わなかったのは、声が震えるから。
振り向かなかったのは、見たら避けるなんてできないから。 ねぇ、雄成。
本当にこれでいいんだろうか。
恋は駆け引き何ていうけど、こういうのは、つらい。そんなら、俺は駆け引きされてるくらいでいいじゃんって、思う。
別にさ、好きっていわれたわけじゃないから、どれくらいひどいことしたかなんて、検討もつかないけど。
酷いこと、してるよ。
悪い男、かっけーっていつもみたいにいえないくらい、自分の行動、凹むよ?
それに、呟くんだもん。
小さく、溢れた、零れた、みたいに、呟くんだもん。

『なんで』

俺が聞きたいくらい。
なんでそんな、いつもと違う、擦れて聞こえにくい声で、きくの?
俺が振り払ったことについてなの?
今の俺の態度なの?
なんでもいいよ。
そんな声出さないで。
酷いことしてるの知ってる。
友達にとる態度じゃないし、好きな人にとる態度じゃない。知ってるよ。
お願いだから。
勘違いでも勘違いじゃなくても。
俺、泣いちゃいそうだから。
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