うっかりロックフェスティバルリターンズ


はちべぇさんもさ、人間だ。
学習するじゃんねー学習するじゃんねぇー?
ぶっちゃけさー、俺、この光景、たぶん、みたことあるんですけどー?
まぁさ、一回目の時と違って、なんつーの?
すっきりしたー…的なね。
身体痛いとか重いとかなくて…でも、とりあえず相変わらず隣は見れない的な。
でも、やっぱり頭はガンガンしてるというか…二日酔いですね、すみません。
もう、なんか自棄酒だったんです。
心友に愚痴いって、管巻いて…決着付けてやるー!!って電話したんですけど、覚えてるのはそこまでです。
またか、また酔った勢いかああああああああアア!!
で、やっぱり隣は上半身裸の…いや、確認してないから全裸かもしんないけど…の、男がいる状況ってさー…どうなの?
俺、また、覚えてないですよー?
「……おい」
あ、隣の人、おきたみたいです。相変わらず、人の気配に敏感ちゅーかなんっちゅーか。
もうね、相変わらず振り返ることができません。
前は、怖くて、信じがたくて振り返ることができませんでした。
その、さ。
今回は、なんか、疲れた、掠れた…感じの声が聞こえた瞬間に、振り向けなくなっちゃったんだよねー。
なんつーか、色っぽいです。ごちそうさまあああああ!!!
わーん。俺はまだ若いんだよ!朝だってちょー元気だよ!もうさ、隣で、すげー好きな人がそんな色っぽかったら、たとえ振り向けなくともですね、主張が激しくなっちゃうのは仕方ないことで!
「…お前、さ…」
隣で、そう隣で!
どんな格好してるかはしらないけど、隣で!
「覚えてねぇえだろ?」
はい!もちろんです!とか答えられないのは相変わらずです!
この同衾しちゃった的展開に、避けてたはずなのに、なんでぇー?ですよ。
「…俺、今回は覚えてんだけど」
なんか、ちょーっと。なにか、不機嫌そうですよ。ホント、不機嫌そうですよ。こわいです、隣人こわいです。
「なぁ…覚えてない?」
覚えてませんよ!肝心なときはいつだって記憶にございません!!
ううう。今回も、失敗しちゃった…か、なぁ。
「…覚えてないなら、思い出させればいい」
「…え?」
前と、すげー態度違うよね、アキラ氏!
そんで、おれは思わず振り向いちゃったわけです。
気だるげにこちらを見上げるアキラ氏。
不機嫌というよりも、ちょっと泣き出しそうなアキラ氏。
「なぁ」
アキラ氏の前ではいつもうまく話ができない。
怖かったり、緊張したりで声がまったくでない。
「明って呼べよ」
手が伸びてくる。
筋張ってて、人の殴りすぎで綺麗とはいいきれない手が、指が。
拒むこともできないで、俺も思わず泣きそうになる。
名前、とか。
一度だって、ちゃんと本人の前で呼んだ事ない。
「呼べよ、なぁ、…サクヤ」
思わず抱き締めてしまったのは、しかたの無いことです。
小さく、名前を呼んだら、こぼれるように笑ったアキラ氏…アキラを抱き締めないことなんてできないんだから。
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