俺もさーさすがにさー、高校二年生だからさッ!ファーストキスはレモン味とか甘酸っぱいとか!いわねーよ!まったくいわねーよ!
キスする前に食べてたもんの味だってわかってるよ!
けどさ、可愛い女の子って、ふわっふわで、周りのこと気にしてて、何とはなしに口のこととかエチケット的に気をつけててさー。飴とかガムとか口にしてそうじゃん。まぁ、飴希望なわけですが!
それも、薄荷とか甘露とかじゃなくて、こう、甘いだけがとりえのフルーティな飴とかさ!!
いかにもな妄想で申し訳ないが、男が女に夢を見なくなったら、あとはもう、ロマンを追いかけるしかねーだろ!ねーだろ、こら!
そんなわけで、ファーストキスは甘いものが希望だったわけですよ。
そう、『だった』わけですよ。
なんでなんでなーんで〜。
むくっといきなり起き上がった人に『うまそう』ってベロチューされねばならんのですか!わけがわかりません!
俺がクリームコロッケとか食べてたのが悪いんですか!
ちょっと気持ちよかったとかそんなの嘘です!
呆然とするあまり思ってしまった幻です!!
「なー…ユウセー…売店にさ…歯磨き粉と歯ブラシって売ってると思う…?」
「んー?まぁ、キスくらい海外じゃ挨拶じゃない。ガマンしなよ」
此処は海外じゃありません!国内です!日本です!そんで俺はじゃぽねーずです!!!
ファーストキスが、俺の食べてたカニクリームコロッケとかみとめません!絶対みとめません!まず、相手が恐怖の不良、アキラ氏だってことも断じて認めません!
恐怖のあまり動けなくなる前に早業で掠め取られて呆然とした。とか男としても認めたくありません!!
「〜〜!!できるか馬鹿!!くっそ、せめてゆすぎ!!」
まぁ、簡単にいうとね。俺も熱くなりすぎた。熱くなれヨォ!っていっていいくらい、熱くなりすぎた。エキサイティングしてた。認める。それは認める。
だが、この後の展開は断じて認めるわけにはいかない。
「うるせぇー」
これもしばらくたって知ったことなのですが。
どうも、彼は、寝起きはよろしくないようです。そして、寝起きが不機嫌にならないかわりに、ちょっと不思議行動にでるらしい。
そんでそんで、寝入りに煩くされると不機嫌になるようです。
そんなわけで、俺は被害爆心地にいたわけですよ、このとき。
一言ボソッと呟くと、その猛獣は止める間もなく、俺のくち…くち…って、ぎゃああ、また舌!舌入ってきた!歯を舐めるな!知覚過敏なんだ!てか、なに、妙にぬくい!ぎゃーぎゃー!!
もちろん、俺は固まってしまいますよね。
で、クリームコロッケ以上に、しつこくキスされましたとも。
教室の片隅で。親友の前で、ひいては、お昼を楽しみ歓談中の皆様の前で。
舌を噛むわ、絡めるわ、吸うわ、のやりたい放題!抵抗する間もなく、巧みなアレに、チェリーで恋愛とか片想いしかしたことない俺は陥落寸前!
…陥落寸前なんだよ!陥落はしなかったんだ!けしてしなかったんだぞ!
あれは、俺の声じゃねーヨ!あんな甲高い声でるわけね!!
クラスがざわざわしてる以上に、今の俺パニックすぎてわけがわかりません!
ていうか護ってくれるんじゃないのか、親友!!
「そろそろ、やめてあげてよ、サクヤ鳴いちゃうよ」
お、俺は『泣かない』ぞ!泣かないんだからな!!だが、やめて欲しいのは確かです!!
吸い付き魔人が俺から離れたあと、しばらくぼーっとして俺を見つめていた。
俺もしばらく、なんかわけのわからんアレにぼーっとしていた。
「…やっぱ、いやじゃねぇな。なぁ、コレくれ」
「サクヤはものじゃないよ。サクヤ本人からきいて」
親友は、いいこといってるけど、護ってくれるんじゃなかったのか。何度も聞くが護ってくれるんじゃなかったのか。
しかも、何気なく普通にアキラ氏と会話しすぎじゃないですか。
あれか。一度拳を交えて芽生える友情的な。
しかし、この前、雄成が繰り出したのはおそろしく早くて勢いのある蹴り、だったと思います。
「おい、俺のもんになれ」
「……い」
『や』という前に、猛獣の眼光が、キラって、光った。
俺はしがない草食です。もう、なんか、プルプル震えて、食いながらウンコだすくらい草食です。
くわれるーーー!っておもったら、思わず頷いてしまうのは、そりゃあもう、条件反射ですよ!
「それでいい」
満足そうに笑うと、猛獣は、今日三度目のキ…キスをした。
ちょ!
誰か、うがい薬か、歯磨き粉と歯ブラシを下さい!!!!!!