所謂、マンガとかの後ろの粗筋で言うところの怒濤の急展開!というやつが、そこにはあった。
何かに追われる古城を助けようとかそんなことを思ったわけではない。
何かに追われ、疲れて、荒い息を繰り返し飛び込んできた古城が色っぽいと思った。
ひっぱって、何があったか気付かれる前に口をふさぐ。
キスをしながら、コレは男だ。色っぽいってなんだ?しかも可愛くもなければ女にも見えない知り合いだ。
と考え、唇を離すと、頭を抱えられ再び重ねられる。
今度は俺が混乱をした。
こいつは男でもいいのか?気持ち良ければそれでいいのか?
それにしても。
気持ちいい。
噛まれた舌がわずかに痛む。痛みを和らげたいのか、いじりたいのか。舐めて、絡めて、噛んで。
どうでもいいのは俺の方か?
絡め合わせて、吸って、舐めて。
ああ、物足りねぇなぁ…。
俺にもたれかかり抱きつくみたいな形で、息を繰り返す古城の背中には、汗でシャツが張りついていた。
骨が浮き上がった首元がいやに目について、思わず口角をあげる。
「……情熱的だなァ?古城」
俺の声を聞いても態勢も崩さず、息を整えたあとゆっくりと俺を見て、アイツは笑った。
「…イイご趣味だな?」
否定はしないで同じように笑ってやる。
離れていかない体温が心地いい。
「セックスでもするか?」
飯の話をするよりさらりと告げられて、吹き出す。
「どうでもいいのか、てめぇは?」
「…まだ男とは経験ねぇよ」
抱きとめるのもおかしな気がして、手持ちぶたさになっていた手で、なんとなく古城の髪をすく。意外と指通りがいい。
「俺もねぇなぁ…」
「初体験じゃねぇか」
「めんどくせぇ」
古城が吹き出した。
何だか楽しくなってきた。
「さいってぇだな、てめぇ」
「じゃあ、古城ならやさしくしてくれんのか?」
「めんどくせぇ」
俺と古城は互いに笑う。
「じゃあ、扱きあうか?」「ガクチュウかよ」
「じゃあシックスナイン」「飛んだな」
くだらない下ネタをとばしながら、二人とも離れない。
雰囲気にのまれている気がしなくもない。
「の前に、このままじゃ青じゃねぇの?」
「路地だしな」
「キスで我慢するか?」
古城がそういって、俺の口端に唇を軽くあてた。
「…キスじゃ我慢になんねぇよ」
すいていた髪の毛をつかんでひっぱると、古城は簡単に離れた。
「足んねぇ」
「キスがか?」
「キスも」
同意見であるのはこの状態であることから察しは付く。
好感は持っている。
飯はうまいし、菓子もうまい。
友人おもいで、とらえどころがない。
キスもうまいし?
ただ仲が好いかと言えばよくも悪くも無い。
クラスメイトではないが、ただのクラスメイトのような関わりと認識。
ただ深くつながるのは食物くらい。
仲が良ければこんなこと、していないだろう。
そんなことを思いながら、目を細める。
「セックスはめんどくせぇんだろ?」
「ああ」
「で、野外はなしだろ」
「ああ」
首をひねって少し考え、捕らえたままの腕をひき、俺は歩きだす。
「とりあえず場所だな」