Welcome! 魔法学園


「ウェルカムトゥマジックアワー!」
夕方だ。
そこは夕方の色をした場所だった。
「妖しげな入校許可証でごめんちょんまげ」
謝るつもりなんてないんだろうなぁという、謝り方は一つ上の兄でなれている俺は、軽くそれを無視。
「うん、いいシカトだね。さて、今日から君はこの学園に通うわけだけど…って、お兄さんは?」
「方角がわるいそうです」
「…去年は一年物忌みでだったよね」
「今年は方角が悪いそうです」
その一つ上の兄も、『君も魔法使いになりませんか?』という招待状じみた入校許可証…合格通知を見て、昨年、『よし、ならない』といって全力で拒否した挙句、違う学校に通っている。
今年も入校許可証をもらったにもかかわらず、『よし、方角が悪い』といい笑顔で拒否していた。
「おう…仕方ない。とにかく、ようこそ!君には新しくて楽しい学生生活を約束しよう。はいどーん!」
陽気に声をかけてきたやつが、俺の手を取ってぶんっと一回ふる。
それだけで、俺はどこかの眩しくない部屋にいた。
正直、夕方な場所は夕日がまぶしかった。
「今日からここが君の部屋!」
「うっせぇ寮監!」
と、俺が見える範囲で三つある扉のうちの一つから何かが跳んできた。
青い背表紙のハードカバーだな。
と思っていると、ギャス!という奇妙な悲鳴に俺の思考は遮られる。
「あ、あれは、君の同室者のヒューイットくん」
三本白いラインが入った赤い…所謂芋ジャーを履いて、だるっとした緩いタンクトップ姿のちょっときついかんじがあるイケメンがこちらを見た。
ニコッと笑って見せると、暫く俺を見た後、何か納得したらしい。一つ頷いて、たぶんもう一人の同室者だろう人間の名前を口にした。
「リゼルさん」
「あー?」
三つの扉のうちのもう一つが開放されるのかと、ワクワクして待っていたというのに、俺の気持ちは裏切られ、無駄だと思われる中二階っぽいものの階段に急に現れたこれまた男前のお兄さんがこちらを向いた。
声は低くて、機嫌のよしあしがわからないが、悪くはないのではないだろうか。
「新しい同室者」
「あー…カスガイユキヒトくん?はー…ただのイケメンじゃねぇか」
「っすよねーつか、何時まで寮監いるつもりなんだ。説明は俺たちに任せるとか言っておいてこれかよ職務怠慢野郎が」
寮監さんはがくっと肩をおとす。
何か色々リアクションをしてもらいたいらしい。
「寮監さん」
「はい」
「何かリアクションをしてもらいたいんだったら、とても中途半端だよ。もうちょっと頑張ってください」
兄は半端ないからな。
というと、寮監さんはわーんといいながら消えていった。
…いじめっ子といわれても俺は構わない。
「ええと…知ってると思うけど。とりあえず自己紹介しようかな。俺は、春日井幸仁」
現れたきついめのイケメンが俺を見てニシャッと笑う。いい笑顔だ。
「俺はヒューイット・ラクリゼア」
階段に急に現れた男前も、クッとのどで笑ってこちらにくる…いちいち男前だな。
「俺はリゼル・ロンド・グランセル。あと一人同室者のクラウ・フロンドフォートってのがいるが、今は不在だ。後で顔ださせっから、よろしくしてやってくれ」
ちょっと、面倒見いいっぽいリゼルさんはそういって笑った。
男前、普通に男前。
「さて、とりあえず自己紹介はした。ここの説明をしようか」
ソファに悠々と座るリゼルさんは、まるでここの主のようだ。
気を利かせたのか、どこかに引っ込んできて、何か紅茶色の液体とコップをもってきたヒューイットくんはローテーブルにコップを置く。
なんでガムシロとマドラーが無造作にローテーブルに置かれてるんだろ。
ここは喫茶店か。
とか思っていつつ、俺はソファーに座る。
まぁ、なんとかやってけそうだな。と思いつつ。
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