そんな、食べ物のおかげでホームシックしょんぼりしていた俺がすっかり圧力鍋マスターへの道を歩み始め、元気になったなぁと思われたし、実際元気になったわけだが、だからって、ヒューの実家にいかない。というわけではない。
それはそれで楽しみにしていたのだから、いかないわけがない。
学園がファンシーながら、ヨーロピアンな雰囲気であるし、ヒューの家もそうなのかとおもたら、ヒューの家はもっと機能性を重視していた。
森の中にあり、それに似合う外観をしていながら、中は俺の知ってる日本の金持ちの家だった。
ただの高層階マンションの金持ちの家だった。
森から一気に現代社会に戻ってきた気分。
「で、だ」
「うん」
「うち来ても実はやることなんて少ししかねぇんだよなぁ…」
ヒューいわく、本や知識の収集はヒューのお母さんの趣味であるため、本などはたくさんあるから、プリンス・クラウは暇をしないだろう。
深い森と遠慮がちにいったリゼルさんは森を探索しても楽しめる。
けれど、うっそうとした森、怖い。とか、知識の収集にも本にもあまり興味のない俺には何もないらしい。
「竜の姿になるっつっても一瞬だしな」
「あ、それ、見せてくれるんだ」
「おー」
「じゃあ、背中にのせたり、とか」
「誰がするかよ。そんなんただの屈辱だ」
竜にとって背中に人をのせるというのは足蹴にされるというのと同等の行為であるらしい。
竜騎士なんて呼ばれている人たちは契約した竜に騎乗してもいいとそこまで惚れ込まれているわけで、本来誰かを背中にのせるだなんて屈辱以外のなにものでもないらしい。
「手に掴むとかなら」
竜に掴まれて空を飛ぶとか、俺、捕食されかけじゃないか。
と思ったため、その提案は却下したわけだが。
俺の提案により、ヒューは今回何をするか、決めたらしい。
「要は空を飛ぶものに騎乗したいんだろ?」
ヒューがそう言って、早速本を手にとっているクラウと、寛ぎながらヒューのお父さんと話していたリゼルさんを呼び出した。
「へぇ、騎乗演習か?」
「魔法科ではやらないし、僕も興味あったんだ」
騎乗演習とは俺も知らない演習授業なのだが、どうやら騎士には必ず求められるスキルの演習らしい。
聞いた限りで推測すると馬だとかに乗る演習なのだろうけど、ここは魔法世界であるし普通じゃないかもしれない。なによりこんなうっそうとした森で馬を探すだなんて。ていうか馬なんているのかどうかも怪しい。
だから、聞くは一瞬の恥。と聞いてみることにした。
「騎乗演習って何?」
「ああ…そうか、魔法の世界にずっといたわけじゃねぇもんな…動物を探し出して、乗りこなし、運と相性がよければ契約して、乗り放題にしてもらうってやつだ」
「こんなことをいったら、契約してくれた奴らには申し訳ねぇんだが、乗り物を探して乗り回すためだけの演習だ」
「リゼルさんって、そういうとこ、身も蓋もないっすね…」
next/ La-ta-da!top