そんなわけで簡単に言ってしまうと、ハンターをなんとかしてヒューイットくんを助けてしまったのだけれど、なんとか助けた後、門限が迫ってて。
普通にお礼したそうなヒューイットくんを置いて、逃げ帰ったというか。
それで、その時借りた本が例の交換日記で…。
俺、それを借りたままかえしてなくてね。
おかげで一回もその図書館に行ってない。
借りたままになってるのに、催促のハガキとかこないなーと思ってたんだよ。そりゃこないよ。図書館の本じゃなかったんだから。
だから、助けたけど、その時の俺にとって大事だったのは門限とか、借りたままになってしまっている本とか、怒られないこととかだったわけで、ヒューイットくんには申し訳ないけど恩とかそんな、大層なもの抱えられても困るってのが、正直なところ。
実は助けた時、その場で、契約されかけたんだけど、俺もいそいでたから、もう、面倒くさかったんだよね、契約とか。
すぐ済むからって、だいたいすぐじゃないし、俺の中では一分一秒争う門限大事。だったわけ。
そんな重要度低いことが、今更発動してだよ、今まさに、大事な単位を取るための行動を邪魔されてる…と。
「ふざけんな」
でしょ?
いや、ヒューイットくんには本当に悪いと思うよ。
でも、それとこれとは別だ。
守護契約っていうのは、そこまで拘束力がない。
もちろん、俺とヒューイットくんがした契約は、本当のところそれじゃない。
だから、俺が何いったって、ヒューイットくんの意志にそわなければ、命令として通らない。
「契約途中だったんだから、当然だろ」
「それのせいで、俺に他の連中がよってこないって、それ、いい迷惑じゃん」
きついこと言ってる自覚あるんだけどね。
よかれと思ってというか、ちょっと押し付けに近い形なんだけど、悪気はゼロだった行為に、いい迷惑じゃんとは、酷いこと言ってる。
「契約は結んでるし、今ならいける」
「いや、でも、そこで威嚇されたらかわんないからねぇ?」
それは思わず戦斧だして、ヒューイットくんに切りかかるよ。
腹がたつことにそれを、戦斧を見つめるだけで結界張っちゃったヒューイットくんに防がれちゃって、もう、俺はギリギリするしかない。
「みったんが怒ってるのって、初めてみる…」
「俺も初めてだわ。だいたい人のことおちょくってるもんなぁ」
「兄貴、沸点低いっていうか、沸点が点在してて、さっさと落ち着くもん。あんまり怒らないよー。あれも、そんなには怒ってないし」
弟の言うとおり、そんなには確かに怒っていないよ。
ヒューイットくんがどうだろうと、最悪単位落としちゃっても、魔法の世界には未練はないから。
最悪転校も考えている。
普通の学校に。
だって、俺には魔法とかそういうの、将来的に必要ないんだと思うんだよね…。
「結局、ユキの兄さんは、ヒューと契約途中だったから騎乗できそうな獣どころか色んな動物に怖がられてたってことなの?」
王子さまみたいな容姿の子が首を傾げた。たぶん、弟の友人で、弟曰く、プリンス・クラウ。確かに王子さまみたいだよ。童話の世界の。
弟はゆめみがちな少年時代って、まだ少年に分類されるんだけど…、とにかく、幼き頃とても夢見がちだったので、王子さまのイメージもすごくあったに違いない。弟はあれこそ王子さまな外見。と、教えてくれた。
弟は、よく俺に連絡をくれる。
日課といってもいい。
いいんだけどね、俺もそれなりに弟かわいいから。
「みたいだな。契約途中だと、マーキングっていうのができてだな、契約相手を横取りされないように、気配を付けることができて…」
そんな犬の場所とりみたいなことされてたなんて、俺、軽くショック。
「それのせいで、にゃんこには逃げられ、犬には吠えられ…」
「兄貴、もとからにゃんにゃんには逃げられてたじゃん。犬とかは、兄貴が犬からかうからでしょ」
「……イヒ」
「いや、イヒじゃなく」
リゼルさんが腕を組んで、なるほど。と頷いた。
「ユキのお兄さんだな」
なんか心外な納得の仕方をされた気がする。
近くにいたが、会話に加わらずゴソゴソしていたローエルが、何度か頷いたあと、俺に声をかける。
「竜と契約したなら、騎乗は問題無いから、その竜と試験受けろだとさ」
どうやら試験監督である先生と連絡をとってくれていたらしい。
嬉しい計いだけど、あわよくばそれを理由にヒューイットくんとの契約切ろうと思っていた俺のあてが外れたよね。
しょんぼりだよ。
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