俺の使う魔法は、理系の人間が使う魔法だと言われている。
想像力は少々偏っており、数字の面をみて行おうとする。
こうくればこうなるという決まりごとを法則とし、その抜け道をあらゆる手段と見解から探し出し、それをまた絶対とする。
それを証明する手段として魔法という形をつかう。それによって、それらの方程式は証明されるとエンドマークをつける。
だから、一般的にいわれる魔法を使う面におけるイメージが足りない。
決まりごととなってしまった魔法は、イメージするのにたやすく、もしかすると文系魔法使いといわれる類の人々より早いかもしれない。
魔法というのは、時に質量を無視し、常道を無視する。
それゆえ、魔の法であるのだが、それが理系の人間である俺にとっては証明できない項目であり、理解できない範疇に入る。
俺の世界の古くに行われたと言われている錬金術といった、数的な法則性を重んじている魔法というより、科学に近いものは興味深いし、わかり易い。
だから、今、こうしてなんとかかんとか入口を作って割り込んで入った結界でも、アレ?という顔をされている。
結界を張った張本人は驚きで結界維持の集中力が切れそうになっているくらいだ。
「うん、弟の友人は皆、魔法使いなんだっけかな」
「そうなのか?」
一緒に結界に入ったローエルが俺にではなく、弟いわく、兄貴分のリゼルさん問いかけた。
「あ、ああ、一応そうなっている」
リゼルさんはおそらく、弟の友人の中でヒューイットくんを除くと、一番見識が広い。
それは年齢や経験の差なのかもしれないし、リゼルさんの考え方によるものなのかもしれない。
なんにせよ、俺のような魔法を使うタイプの人間を知っていたようだ。
「理系魔法?」
「そうそう。理系魔法だよ」
文系とされる魔法使いはこういったかっちりと開けて閉めるドアを作る、みたいな魔法を得意としない。割と大雑把にフィーリングでドアを作り開けて閉めるため、隙間ができることも多々あり、その隙間を埋めるために上塗りしたり付け足すことも多い。 だから、結界に割ってはいってきたことよりも、無駄なくしっかりした出入口を作ってしまったことに驚かれている。
咄嗟に張られた結界が、割り込んでもこんなにきっちりとした形をとっていられることのほうが俺にとっては奇跡なんだけどなぁ。
「でだ。魔法のことはあとにでも説明するなりなんなりするとして。今の状況を説明しようか」
「そうだな。それが建設的だろうな」
俺もローエルもいまいち真剣みが足りないが、それなりに窮地に陥っているといってもいいと思う。
ただ、ヒューイットくんをはじめ、ラクリゼアという竜の一族がおり、その竜の一族の庇護下に居る限りは怪我はしても死ぬことはないという確信がある。
ただし、自分の身は自分で守れというのはあるし、こうして森が甚大な被害を負っているのは人間のせいだ。
ヒューイットくんを囮にしても、できることなら人間がどうにかしたいことだと俺は思っている。
せめて、気持ちの悪い何でも捕食する、悪食植物を消滅させるくらいはしておきたい。
何でも食べるだけあって、おそらくハンター側にも被害を及ぼしている植物は、エネルギーと自分自身を構成するものさえあればいくらでも再生する。
あれを消滅させるには、一気に植物の本体を叩いて消滅させなければならない。
事情を話して、俺は二人にお願いをする。
「たぶん、弟の方でも協力を仰いでると思うから、お願いできるかなー?」
「え、あ、僕はいいですよ」
「俺も問題無い」
そう言うと、リゼルさんは剣を抜く。
俺もぴたりとひっついて離れない腕輪に意識を集中させ、戦斧を召喚する。
「さっきも思いましたけど、ええと…ミヒロさんの武器ってごついですよね」
弟が王子さま認定しているクラウくんがいうことに、ローエルも頷いた。
俺の顔に似合ってないということらしい。
「うーんー…?これは、うーん…」
説明すると長くなるので、後日、まだ興味があったらでいいだろう。
「また、話す機会があれば、ね?」
「なるほど、そういうところはユキの兄貴といったところだな」
あれ?なんかどうも納得のいかない納得のされかたされたよ。
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