Magical rodでシャランラ!


魔法使いには魔法を使うための杖が必要だ。
それは杖の形をしているものもあれば、アクセサリーの形をしていたり、武器の形をしていたり、日用品だったり、キッチン用品だったりと様々。
どれにも共通しているのは石がついている。ということ。
俺の杖は指輪。石はブルームーンストーン。薄水色のくもったような色のこの石を俺はあまり好きじゃなかった。なんで、もっとはっきりした色の石ではないのかと、俺がいうと、兄がこういった。
向上の石だから。
意味的にはそういう意味をもった石だけど。としばらくは思っていたのだが、たまにカッとなってしまう俺に、その色が落ち着きをもたらしてくれることを知ったときから、俺はこの杖が好きだ。
ちなみに、そんな兄の杖は腕輪。石はアゲートだったと思う。
それは置いておいて。
授業になって初めて、俺はヒュー…ヒューイットは長いからそう呼ばせてもらっている…の杖と、リゼルさんの杖をみた。
「かっこいい、リゼルさんカッコいい!」
そうかぁ?と眉を片方だけ上げたリゼルさんは大剣をもったまま首を傾げた。
ちょっと邪魔そうではあるものの、大剣というのは非常にかっこいい。
その隣で杖を持っているヒューの杖は、まぁ、杖であるわけだが。
「二人とも石なに?」
「ヘマタイト」
と、これはリゼルさん。
柄の部分にきらりとクロガネ色の石が光る。
ヘマタイトとはこれまたリゼルさんに似合った石だなぁと感心していると、ヒューも答えてくれた。
「アイオライト」
杖の一部についたそれは目の色にも似ていて、なるほど似合いの石だ。
「で、クラウは?」
実は、クラスが違うクラウはこの授業にはいないわけだが、クラウとは昔から同室であるヒューが教えてくれた。
「あいつはレモンクォーツ」
おっとりとした彼には似合うような似合わないような、黄色い水晶を思い出して、俺は頷き、ふと、思い出す。
「もしかして、ピアス?」
「そう、あれがあいつの杖」
「おい、そこの三人組、ちゃんときいてたか?」
ヒューの声に割り込むようにして入ってきた担任の声に、俺たちは頷く。
そう、今は授業中。
もう既に仲よしこよしの三人組と判定されている俺たちは、はーいと適当に返事をする。
もちろん、話はそこそこきいていた。
「今から実力を見る。って、唐突すぎだとおもうんだけどなぁ」
「こんなもんだろ。四分の一実習、四分の一普通授業、半分研究だからな、俺たちの授業なんて」
今日の午前中は国語だとか数学だとか、そういう普通の授業だった。
午後はこの実力をみるとかいう魔法に関する授業になっていた。
「これによって、攻撃系、サポート系をランク別にわけるから、手は抜かない方がいい」
なるほど。
俺は指輪を親指から外し、中指につける。
すると指輪はあっという間に、中指にぴったりのサイズとなった。
「その指輪、便利だなー」
「あ、うん、魔法によって伸縮自在」
「俺もそういうのが良かった」
俺は杖とか剣とかのがかっこよくて憧れるけどなー。実用性とるとアクセサリー類だけど。
などと思いつつ、俺は先生に呼ばれて、先生のいる絶対結界の中に入る。
なんでも、絶対結界の中では重大なダメージは負わない。らしい。
「ユキヒト・カスガイは…ふむ。ヒューイット・ラクリゼア!おまえとだ!」
あれ?っておもっている間に、ヒューが歩いて絶対結界の中に入った。
「おまえと対戦かよ」
と、杖をだしてきたヒューは攻撃型の魔法使いなのかもしれない。
「えーうんまぁ…そうみたい」
やる気ないみたいな答えになってしまったが仕方ない。
俺は指輪に意思を伝える。淡い水色の光が地を走る。
「地割」
「攻撃が唐突過ぎるだろ、おまえ。しかも、チカツってなんだ、そのネーミングは」
と文句を言いながら飛び上がったヒューは杖を一度振るう。
ふわっと浮き上がって…あれ?補助魔法?と思っていると、ヒューもひとこと。
「空矢」
「いやいやいや、ヒューのそのネーミングもね!」
魔法には一応それぞれ名前がちゃんとついている。
しかし、その名前を叫んでたんじゃ長いし、発動遅れるし、魔法ばれるし。というので、魔法使いは独自に名前をつけて魔法を発動させる。
俺が先ほど使った地割は、アースクエイクというのが本当の名前だし、ヒューの言ったクウヤはエアーアローとかいう名前だ。どちらも略すほどの名前ではないが、なんとなく自分が使っている魔法には独自に名前をつけなければという雰囲気というものがあって、俺はなんとなくつけてしまっている。
俺はとにかくその空気の矢を避けるべく、叫ぶ。
「地は利にして是、守るものなり!地壁(ちへき)」
「おま…そのままだな…」
地の壁がそそり立つそこに、空気の矢がグサグサとささる。
「うん、まぁ、わかりやすいじゃない?」
「いや、わかっちゃならんだろ。つかおまえ、攻撃系なんだな」
そう、ヒューの言うとおり俺は攻撃系魔法使いだ。
攻撃魔法だと呪文詠唱なしで発動させることができるが、補助系魔法。…結界だとかこういった盾だとかは略式詠唱、または本詠唱なしでは発動できない。
「地系大型魔法攻撃系ってとこか」
ぷかぷかと浮きながら、ヒューは冷静に俺の魔法形式を分析する。
「そういうヒューは、もしかして補助系?」
攻撃魔法も、詠唱なしだったが、空に浮くのは杖を振るだけだった。
「その通り。…ま、攻撃系もそれなりっちゃーそれなり。砕(さい)」
何かすごい力の空気がぶつかって地の壁が崩れる。
俺は浮いているヒューを見上げ、微妙な顔をした。
本当にとても微妙な顔をしていたらしい。
「ひーきょーうー」
「とかいいながらなんだその、結界いっぱいの魔方陣は…」
「…えへ」
「いや、えへ。じゃねぇよ」
「地槍群舞(ちそうぐんぶ)」
「わかりやすいけどよ!」
地面からいくつもいくつも槍が作り出され、ヒューめがけて飛翔。
「派手だな」
とは俺とヒューの試合を見ていたリゼルさんの言だ。
俺は知らなかったのだが、ヒューとリゼルさんが話しているときにその言葉を呟いていたことが発覚した。
結果は、俺もヒューもどっちつかず。
俺は攻撃系ランクAに所属することになって、ヒューは補助系も攻撃系もいけるらしかったが、補助系ランクSに所属することになったらしい。ランクSとは羨ましい。
そんな俺と同じ魔法クラスになったのは、なんと初めて会った時おっとりしているとおもったクラウだった。
リゼルさんは、コントロールと補助が苦手だからとなんと補助ランクCクラスになっていた。攻撃だとランクBだという話なので、本当にコントロールが苦手なのだろう。
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