「地の魔法なんだ?僕は水だよ」
クラウはおっとりしていて少し細身で小さい。
さもすれば王子様と呼ばれてしまうような金髪碧眼を持っている。
普段はその金髪に隠れてあまり見ることのないレモンクオーツのピアスは、金髪とあいまって、金色に見える。
それを誰だったかが、金色の王子と呼んでいるらしい。
おっとりしているのも原因であるのだが。
「水系ってことは回復もつかえたりする?」
「うん。攻撃系ではあるけどね。使えるよ」
どうやら、ここの学園の高ランクの魔法使いはある程度両方使えるという状態の人間が多いらしい。
リゼルしかり、クラウしかり。
でも、俺も補助系は略式詠唱をしているが使えるので、高ランクで間違っていない。と、思いたい。
「あ、生徒会の人たち、今日、寮食なんだねー」
「げ、死ぬほどうぜぇ」
「あいつらのせいじゃねぇんだ、そううざがってやるな」
にわかにまわりがざわつき始めた。というよりも、叫んでる?何か興奮することでもあったのかという騒ぎようだ。
俺が首をかしげていると、きらびやかというか…漫画補正されたのかというくらいの連中がこちらにやってきた。
全部で四名。
そのうちの一人…というよりも、いちばん顔が整っているというか、男前というか、とにかく男として羨ましい限りの高身長と男らしい美形がこちらに近づいてきて嬉しそうに笑った。
ああ、それはもう嬉しそうに。
「リゼル!」
「おいおい、会長様が気軽にランクA以下に声かけちゃなんねぇだろ」
くっと喉で笑ったリゼルさんは座ったまま、その一番の美形を見上げる。
「馬鹿いうな。お前に声かけられないんなら、ほとんどの人間に声かけられないだろうが」
ワケがわからずヒューとクラウをみると、二人は至って穏やかに和やかに食事を続けていた。
三人の煌びやか集団がこちらに来ているにもかかわらず。
というか、ヒューさっきから飲み物しか飲んでない気が。
「ヒュー、クラウ…」
「あ、そうか」
俺が不安げだったのだと思う。クラウが何かに気がついた。
「ユキは、入学したばっかりだったね。すっごく馴染んでるから、もともといた気分だったよー」
「あ」
ヒューも今更それに気がついたらしい。
え、俺、そんなに馴染んでるの?
「生徒会はね、三学年のウィザードの主席から選ばれるんだよ。だから、三年生の攻撃系、補助系、二年生の攻撃系、補助系の生徒は生徒会に入ることになってる。一年生も第一試験が終わったら、補助として入ることになってるよ。例外もいるけどね。で、この学校には騎士、戦士もいるの、知ってるよね」
うん。と俺は頷く。
「その人たちの主席が風紀委員会になるんだよ」
「で、リゼルさんは騎士主席だったんだ」
へー…と、頷いたあたりで、リゼルさんを二度見する。
「え、えらいひとだったんだ…」
「…おい、こいつ、ちょっと面白い」
近づいてきていた煌びやか軍団の一人が俺の言葉を聞いていたらしい、そう呟いた。
見上げるとそこには煌びやか軍団の中で、輝くというか。輝いてはいるけど、わりにフランクそうなお兄さんが俺をみていた。
リゼルさんは一等の美形と話していたが、俺の様子に気がついたらしい。
説明をしてくれた。
「あー…ユキはこいつらに会うのは初めてだったな?おまえの前にいんのが、ディオス・エゼリオン…生徒会書記で一年。俺の横にいんのが、生徒会長のウィード・ウラ・ゼクサシス、二年。で、そっちに控えてる神経質そうなのがリーリエ・ロー・リンデンス、副会長で三年。後ろにいんのが、メルエル・トエラ。会計で二年生だ」
「さっきクラウに例外って言われたのが俺だ。もしかして、外部入学生か?」
「あ、はい」
なんか眩しいなぁこのひとたち。
と思いながら、見上げていると、ディオス書記が俺を見詰めていた。
「えらくイケメンが入学してきたと聞いた」
「クラウクラウ、煌びやかなイケメンに、イケメンって言われた!」
「うん、ディオ、残念なイケメンだよ」
「って、俺、残念なの?」
「かわいそうなことにな」
「ヒューまで!」
褒められてるのに、残念ってついてるだけで、気持ちが残念だ。
俺は救いを求めるように、リゼルさんに視線を向けたが、リゼルさんは『残念だが…』と首を振る。
いやいや、俺の気分が残念だよ。
その様子を見てディオスが少し笑うと、首をふってくれた。
「いや、素敵な…イケメンだと…わるい、フォローしきれない」
なんといういい奴だ。と思いながら、俺も首を振る。
残念だということに、この場はしておこうと思う。