ディオスはクラウとはクラスが一緒で、友人だった。
ディオスは実にいいやつというか。穏やかな人だ。クラウの友人といわれたらなるほど、と頷かざるを得ない穏やかさをもっていた。
なんというか、一緒にいたらすごくまったりする人なのだ。
それは、生徒会長も同じだった。
生徒会長のウィードさんはリゼルさんとはとても深い縁…というか、リゼルさんがウィードさんの元騎士で、今はランクの関係からその騎士位を返上しているらしい。この騎士というのはこの学園の制度で、実習などで外に出るとき、魔法使いを物理攻撃から守るために存在するもので、騎士や戦士のクラスから用意されるらしい。
で、騎士位を返上しているわけだが、ウィードさんとしては、リゼルさんほどの騎士はいない。と、他の人間をその地位におくことを拒んでいるらしい。
愛されてる。とリゼルさんにいうと、軽くまぁな。と流されてしまった。
大変大人な対応だったわけだ。
ウィードさんもウィザードでありながら剣を振るう…魔法剣士であるらしい。
正確な職業としての登録はしていないため、ウィザードであるが、それはもう強い人だそうで。
学園側も無理に騎士をつける必要はないということで、ウィードさんの騎士は現在空席。
そんなウィードさんはいつの間にか、ディオスとともに、よく俺たちの部屋にやってくるようになっていた。
ディオスは単純に俺たちと気が合うからであるが、ウィードさんはこの空間が落ち着くから。というのが理由らしい。
なんでも、三年生の副会長であるリーリエさんは本当に神経質なところがあって、たまに生徒会室でぴりぴりしているらしい。
「あれは恐ろしくて…癒されたいんだ」
なんていうウィードさんは俺たち…リゼルさんのぞく一年生に優しい。
ディオスが穏やかなら、この人は非常に大らかな人だ。なんでも笑って許してしまえそうなところがある。癒されるのはこっちだ。
なんて思っていると、会計のメルエルさんが部屋に非難してきて、たまってきた生徒会連中を迎えに、副会長のリーリエさんがやってくる。
一頻り生徒会の三人に説教を食らわしたあと、俺たちに謝る。おっとりなクラウがいえいえといって笑うと、すぐ赤くなって挙動不審になり、部屋を出て行く。
わかりやすくて憎めない人だなぁ…という気持ちでいっぱいだが、クラウもおっとりしていて鈍いため、どうして、副会長は毎回あんなに顔を赤らめてるのかな…なんて残酷なことをいう。
「副会長様の恋を応援し隊って部隊をつくったら、だれか入ってくれるかなぁ」
と俺が呟くと、クラウ以外が親指を立ててくれた。非常に快い人たちである。
後日、その部隊を発足すると、副会長親衛隊なる部隊が大量に入ってきてくれたのは別の話である。
とにかく、兄にその話をすると、何それ、ほのぼの羨ましい。転校したい。といわれたくらい、俺の学園生活はのんびりしていた。
ある日、呼び出しを食らってしまうまでは。
「あんたなんかが!あんたなんかが、生徒会の方々にちか…ちか…」
すごく自信なさげに俺を見上げて、その子はなんとかその言葉を言いきった。
「ちかづいて、いいとおもって、るの…!」
本当に自信なさげに。
「あ、うん、あの人たち、煌びやかだよね…」
ちょっと場違いかなーとはおもっていたよ。
人からはイケメンなんていわれているけれど。
「あ、いえ、あの…うう…すごく、かっこいいから、その…」
呼び出して忠告しにきてみれば、俺は意外にもとてもイケメンだったと、その子はいった。
いや、イケメンって。こまったなぁ。と俺はおもったわけで。
「あの、あの…その、ごめんなさい。何時までも、生徒会の方々と親しくしてくださって大丈夫ですから!」
その子のいうことには、別にイケメンでなくても生徒会の方々には近づいてもいいのだそう。なんか、下心があるやつも多いから、反応をみてちゃんと忠告なり、なんなりをするんだそうだ。
つまり、俺の反応は合格だったわけだ。
「あ、うん。なんかない限りは、親しくしたいとおもってる…よ…?」
言い切る前に、その子はがしっと俺の両手を掴んで、目をうるうるキラキラさせた。
「し、親衛隊をつくらせてください!」
「え、いや、ご、ごめん…」
断ったけれど。諦めないんだからね!と去っていかれてしまった。
ああ、ちょっと騒がしくなりそう。