そんなこんなで、人間じゃないヒューに俺は突撃をした。俺を見守るディオを置いて。
なんとかかんとかヒューを見つけ出し、再び尋ねてみた。
「人間じゃないって本当?」
いや、普通聞かないだろ?ってことだが、ディオがさらっと何気なく普通のことのように言っていたから、別にトラウマなんてないんだろうし。と思って。
尋ねた結果、ヒューも至って普通だった。
「あー…人間じゃねぇけど?」
「ちょっと、何で黙ってたし」
「いや、聞かれなかったし」
「普通は人間ですか?なんて聞かないし」
それもそうだと頷くヒューはどっからどう見ても人間にしか見えない。
本人いわく、竜なんだそうな。
俺が、目を輝かせ…てたかどうかは俺にはわからないんだが、何か逆らい難い視線でみていたらしくて、ヒューは今度本来の姿になってくれると約束してくれた。
「で、おまえ、親衛隊どうした?」
「……ヒューが人間でないという事実を前に、そんな小さなことは」
「忘れてたか。いや、いい。今更だ。おまえらしんじゃねぇの」
残念なものを見る目がすごくいたい。
ヒューに人間かどうかを聞いたあと、まだ通話中だったらしい指輪から声がした。
『あれー?親衛隊?』
「あ、忘れてた」
もちろん、通話切るのを。
「兄貴、さっきの忘れて」
『わすれないよー。急に走り出して誰か置いてきたことも、ヒューくんとやらが竜だってことも…ってことはラクリゼア家のヒトかなー?てか、こんにちはーユキヒトの兄の深博(ミヒロ)ですー』
「あ、こんにちは」
普通に会話をしてくれる兄とヒュー。
『お噂はかねがねー。うちの弟が騒がしくてごめんねぇ。たまには黙るから許してやってねぇ』
「いえ、なれたっすから」
「え、慣れなきゃなんないの、俺」
ちょっと凹んだ。冗談だと思いたい。
俺の様子にヒューがニヤニヤと笑っている。やっぱり冗談らしい。
『あー…なんかうん。ユキ、よかったねーいい友達できたねーというわけで切るねー』
プツっと指輪から音声が途絶える音が聞こえた。
ヒューはふと、長い溜息をついて俺の指輪を見る。
「何?」
「いや、お前の兄貴、すごい人だな。ラクリゼアの人間が竜だなんてことは一部の人間しか知らない事実だぞ」
「え?でも、ディオは人間じゃないって」
「それは魔法世界には人間じゃないやつらなんて大勢いるからな。だが、種族まではしらねぇ」
それはかなり重大なことを聞かせてくれたのじゃないだろうか。
俺は、すごいことを聞いてしまったようだ。
「まぁ、表向き、エルフってことにはなってんな。森ん中にすんでっし、エルフと一緒に暮らしてはいるから」
「こんな態度の悪くて繊細さのなさそうなエルフいやだ」
「…エルフにどんな幻想もってやがんだ?」
照れ隠しもあるけど、結構な幻想持ってる気もする。
なんで竜であるかを教えてくれたのか。
ヒューは俺ならいいと思ってくれたから、教えてくれたに違いないのだ。
たぶん、クラウやリゼルさんだって知っているだろう。
そういう輪の中に加われたことが照れくさくも嬉しかったのだ。
「会って間もないのに、おまえは懐かしい気がするから、まぁ、オマケだ。無害そうだし」
あとで聞いた言葉でちょっと台無しな気分にはなったけどな。
オマケってなんだ、オマケって。あと、無害って。